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女男子生徒Bー5
半ば引きずられるように陽に手を引かれる。
ただでさえ狭い廊下の、さらに狭い人の間を陽はずんずん進むから、絵は何度も何度も誰とも知らない生徒に体をぶつけた。
足がもつれて、転びそうになったところで陽の歩みが止まる。そして無理矢理どこか知らない教室に押し込まれた。
「っ・・・たぁ・・・」
ぶつかりながら歩かされ少し痛みを持つ足をこすりつつ辺りを見回す。
少し狭い。
そんな教室に、様々なものが納められてる段ボールがいくつも重なっていた。
何かの準備室だろうか?
もっとよく中身が見れればなんの準備室か検討もつけたのだが、そんな暇もなくまた腕を引かれ立たされたところをがっちり肩をホールドされた。
対面する形のはずなのに目が合わないのは、彼が俯いているからだ。
「陽・・・ど、した・・・?」
今更ながらおそるおそる声をかけてみる。
表情が見えないから何を考えてるのかも読めない。
そもそも、こんな場所に連れ込まれた時点で陽の思考がわからなくて頭が混乱していた。
わからない。わからないけどとにかく顔を上げてほしい。
それだけだったのに。
「・・・・・・んで・・・」
「え?何だ?」
「・・・で・・・・・・何であんな風に話してたんだっ!!」
勢いよく押され、背を教室の壁にぶつける。
痛い。
息が一瞬詰まったところをさらに体を押され、冷たい壁に押し付けられる。
「ょ・・・・・・」
「何でだ?!なあ、何でなんだ!!!」
両肩を激しく揺さぶられ思考が真っ白になる。無意識に腕を引き剥がす動作をしたら、力が弱まった。安定する視界に、陽の姿がはっきりと映る。
黒髪がいつも以上に乱れている。陽にあげた二本のヘアピンは今にも外れてしまいそうだ。
そんな振り乱した髪の毛の下、やっと見えた陽の顔。
深く、深く傷ついたような苦渋を浮かべた彼の顔が、目の前にあった。
以前力のこもる陽の腕に掴まれ肩がキシキシと悲鳴をあげている。
痛いと泣き叫びたい。
それほどまでに痛い。
けれど叫べないのは、それ以上に痛みを抱えた瞳に見つめられているから。
「どうして・・・」
どうして
「お前は・・・俺がいなくても笑ってるんだ・・・!」
お前はそんなにも悲しい顔をしているの
+++
胸が苦しい。
困惑している瞳が真っ直ぐに俺を見ている。
何もわからないと。
どうしてと、如実に語りかけてくる瞳。
頭にカッと血が上る。
「・・・ぁ・・・っ!」
相手の顔が歪む。
肩を掴む俺の腕を引き剥がすように弱々しく手がのびてくる。
そんな小さな拒絶に言い様のない痛みと、苛立ちが全身を駆け巡る。
もう相手は、俺の顔を見ていない。
加減もなしに相手の体めがけて腕を振るった。
自分より小さな体が近くの段ボールにぶつかって倒れた。
息が荒い。
視界が赤い。
頭が苛立ちで締め付けられるように痛い。痛い。痛い。
よろよろと起き上がろうとする相手の体に馬乗りになり襟首を掴む。
苛々する。
力任せに腕を振るった。
抵抗はない。
頭が痛い。
痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。
ふと、相手の頬に赤い何かが付着してるのに気づいた。
赤く腫れた頬に走る一線のさらに赤い傷。
つぅ・・・と滲み出た紅い液体が重力に従って線を描く。
俺はこの色を知っている。
いや、知りたくなかったけど刻み込まれた。記憶が。フラッシュバックする。
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