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鏡よ鏡よ




「今日はね!楽しいことが有ったんだ!」

鏡に向かい少女は語り掛ける
鏡の中の少年は柔らかく微笑んだ

『楽しいことが有ったんだ?』

「そうよ!凄く嬉しいことが有ったの!」

声色を上げはしゃぐ少女
少年はその掌に己のそれを重ねるような仕草をした

『嬉しいこと、僕にもすごく分かる
君の笑顔はとても輝いているもの』

『喜びは君だけでなく、君の笑顔で周りの人も楽しくさせてくれるんだ
その気持ちを大切に』

『その幸せがこれからの幸せに続いてゆくのだから』

少年はニコリと一層優しく笑った

「・・・うん!」

少女は少年の言葉に力強く返事をした




「今日は哀しいことが有ったんだ・・・」

少女は鏡に向かい話し掛ける
少年は目を細めて少女に微笑んだ

『哀しいことが有ったんだ?』

「そう、凄く悲しいの・・・苦しいよ・・・」

声色を下げ睫毛に涙を溜める少女
鏡の中の少年はその涙を拭うような仕草をした

『お願いだから泣かないで
君の悲しみは痛いほどに伝わってくる』

『だけどね、悲しみは切ないけれど君に新しいことを教えてくれるから
その気持ちを大切に』

『君だけの悲しみは君を絶対に良き未来へと運んでくれる筈だから』

少女を慈しむように少年は笑った

「・・・うん」

少女は苦しそうに、けれど力強く返事をした




「ねぇ、今日もいい日になるかしら?」

鏡に向かって少女が呟く
だけど鏡は答えない

それでも少女はニコリと笑って、足取りも軽く家を出る

学校の道行き
歩き慣れた通学路
少女は歩く、前を向いて歩く

彼女が歩く後ろの方で、彼女の後ろ姿を見た少年が、反対方向に歩き出す

口元に柔らかな、微笑みを浮かべて



○月○日 晴れ
今日もとても



幸せでした






++++++
ちょっと不思議感覚を・・・
実はこれ頭に浮かんでは消えるルカイリパラレル話の副産物なんだ・・・

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