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一年四組の百合




私の名前は柳原こずえといいます。女子高校に通う、何の変鉄もない女子です(自称)。

高校に入学して一ヶ月、わたしのクラスにはとても目立つ子がいます。その子はわたしの後ろの席の人で、横井比奈さんといいます。

彼女は、よくクラスの人に足が綺麗とか、肌が綺麗って声をかけてます。
ちなみにわたしは雰囲気が可愛いって頭を撫でられました。

回りの人達は比奈さんのことが苦手のようです。わたしには、彼女がみんなを褒めているようにしか見えませんが、みんなは目がやらしいと話します。

だから、比奈さんとお喋りする人はいません。
比奈さんはいつも一人です。


それは寂しいので、わたしは時々比奈さんに話しかけたりします。友達には止めろって言われちゃうけど、みんなは誤解してるんです。
比奈さんはすっごく話しやすくて、明るい人だってみんな知らないんです。



「こずえちゃん聞いてよ」

珍しく比奈さんから話しかけられて、わたしは後ろに振り返ります。比奈さんはスゴく嬉しそうな顔です。可愛い顔の彼女がこんなにニコニコしていると、わたしもつられてニコニコになります。

「好きな子ができたの」


ちょっとだけ頬を赤らめて言う比奈さんに、わたしはニコニコしながらおめでとうって言いました。その後彼女は好きな子が可愛いとか、恥ずかしがり屋さんだとか教えてくれました。

きっと比奈さんに似て素敵な人なんだなとわたしは思いました。



数日後、比奈さんの表情が険しいです。
考え込むような難しい顔をして、ため息もたくさん吐きます。


「どうしたの?」

意を決して尋ねるわたしに、彼女は悲しそうな声で答えます。


「好きな人がまったくの別人だったの」

「別人・・・?」

「そう、私の根本とまるっきり真逆の別人。騙されたの」

目にうっすら涙を浮かべる姿に胸が痛みました。きっと大好きなんでしょう。スゴく辛いのでしょう。


「元の関係には戻れないのですか?」

「戻れないわ。知ってしまったんだもの・・・戻れないわよ」

「・・・じゃあ、その別人のその人を新しく好きになれないですか?」


わたしの言葉に、比奈さんが目を見開きます。そしてブツブツと険しい表情のまま何やら考え込んでいる様子です。わたしはそれを見守ることしかできず、黙って比奈さんを見つめます。



「・・・も、ね。ありがとうこずえちゃん。ちょっとだけ元気が出たわ」

数秒後、何かを決意したらしい比奈さんはわたしにニッコリと微笑んでくれました。
やっと見れた彼女の笑顔に、わたしも笑いました。



それからまた比奈さんは明るくにこやかに笑う比奈さんに戻りました。きっと別人な好きな人を好きになれたんでしょう。


「こずえちゃんは今日も可愛いわね」

よしよしと上機嫌にわたしの頭を撫でる比奈さん。
また皆が小さな声で何か言ってますが、皆気づいてないだけなんです。



女の子が好きって言う比奈さんだって、普通に恋してるんですよ?







何も知らない恋のキューピッド。


彼女とその彼氏が普通な恋をしてないことなんて、こずえは知りません!


++++++
「おかしな二人」比奈側別視点。
こずえちゃんはしっかり比奈が男女の付き合いをしていると思ってます。
現実は・・・程遠い。

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