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女男子生徒A-9
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兄貴はよく口癖のようにこう言った。
『人を遠ざけちゃ駄目だよ陽。誰でもいい、一人でもいいから“友達”を作るんだ』
幼い頃の俺は純粋に尋ねた。『どうして?』と。
あの頃、俺という人間には好奇心も、感情も、何もかも希薄なものでしかなかった。
中学の頃になってやっと周りの目というものが気になり出して、髪を伸ばして傷を隠すようになった。
それまでは何にも、興味がなかったのだ。
兄の言い聞かせてくれた言葉の意味を理解したのも、中学の頃だ。けれどその頃にはもう手遅れで、俺と周りにはどうしようもない壁があった。
そんなものの取り払い方なんて知らなくて。ただ俺は傷を隠して生きていた。
高校に入ってからも、人と俺には壁があって。
それでも、これでは駄目だという自覚はあった。
そして見つけたのが、絵だった。
今を思えば、絵と同じクラスであって本当に良かったと思う。そうでなければ俺は他に興味の沸く人間なんていなかっただろう。
絵は不思議だ。
温かい。その距離が、態度が、兄とは違う温かさを持っている。
それに絵は簡単に俺を外へ連れ出してくれる。いつもなら面倒だと片付けるようなことも、絵に頼まれれば断る気にならない。むしろ、楽しささえ覚えた。
人を部屋に招くのも、俺の人生では初めてのことだった。
今まで兄貴にしか食べさせたことのない料理を「神だ」なんて大袈裟に騒ぐ絵。
ただ声をかけただけなのに、律儀にも待っていてくれた絵。
その行動が面白くて、でも確実に俺の何かを変えていて。
『大事にするんだよ』
優しくそう言った兄貴に俺はきっと、躊躇なくこう言えるだろう。
「言われなくても」と。
何がここまで絵という人間に惹き付けさせるのかはよく分からない。
けれど絵は、他人とは違うのだ。
素の対応と言えばいいだろうか?
孤児院という環境で育ったから、俺のような人間でも受け入れてくれる度胸があるのかもしれない。
とにかく“当たり前”で接してくれる。
他の誰にもない、絵だけが持っているもの。それに俺は、どうしようもなく惹かれているのかもしれない。
絵と一緒にいると楽しい。
絵と一緒にいると温かい。
そういえば最近、気づくと絵のことばかり考えている気もする。
明日はどんな話をして、どんな反応をしてくれて、笑顔を見せてくれるんだろうか。
考えるだけで、楽しくなる。
絵は本当に不思議だ。
不思議だけど、そんな理由なんて知らなくてもいいと思ってしまえる。
それくらい、絵の隣が居心地がよくて、その場所が俺は好きになっていた。
++++++
これで二つ目のまとまりが終わりです。
頭の中の計画では次のまとまりで終わる・・・はずだ・・・!
なんというか絵と陽はとても動かしやすいのでついハッスルしてしまいます。ハッスル!ハッスル!
次で終わらせます。なんとか・・・な・・・。
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