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いつもと違う君




「お前馬鹿?」

いきなり発された彼の言葉に、私は暫く固まった。


「・・・・・・な、何?急に・・・?」

真正面に座っている彼を凝視する。
いつも通りのつり上がった瞳、いつも通りの引き結ばれた唇。
違うとところといえば、やけに大人しく一ヶ所に留まってることくらい。

『私何か悪いことしたかな?』

不安から無意識に身を縮め眉が下がる臆病な私。


「・・・・・・」

「・・・あの・・・イリア?」

「バーカ」

「えっ?えっ?」


また「馬鹿」と言われる。
理由がわからない。

今まで私は彼の前で本を読んでた(正しくは本を読んでた私の前に彼が来た)。
それだけ、それだけだったのに。

何がいけなかったの?

本を読んでるフリして実はチラチラと彼を見てたこと?
嫌がられた?
でも何で「馬鹿」?

考えれば考える程訳がわからなくなって。
その果てに口からはいつも通りの言葉がぽつり。

「・・・ごめんなさい」

「はぁ?」

最早気弱な私の口癖となりつつある謝罪の言葉。
しかし逆効果であったのか、彼の顔が一瞬にして不機嫌なものに変わる。


「・・・何で謝るわけ?」


声も先ほどより低くなった気がする。

「えと・・・その・・・ごめんなさい・・・」

「だから何で謝るんだよ!馬鹿!」

「ひっ!!」

強い口調に体が震え、情けない悲鳴が口から漏れる。
彼の不機嫌な顔が涙で滲んでぼやける。

怖い。


「・・・何で泣くんだよ」

「うっ・・・あぅ・・・ごめ「バーカ!」

謝ろうとすれば間髪入れず声を遮られた。
目尻から一粒滴が落ちて、それに続いて涙がぽろぽろと零れ出す。

手で拭うけど止まらなくて、顔がぐちゃぐちゃになってしまう。

彼はその様子を暫く見てたが、止まらないとわかるとため息を一つ吐く。
その反応に肩が大袈裟に反応し体が勝手に強ばる。

彼の手が自分に延びてきたのが見えた。
思わず目を強く瞑って身構えて・・・、


わしわしわしっ!


「・・・ふぇ?」

頭を、髪を掴まれた感触。
だけど引っ張るのでなくまるで掻き回す動き。
予想外のことにゆっくりと目を開けると、見上げた先に彼の顔があった。


「え・・・?あの・・・」


どうやら頭を(乱暴だが)撫でたらしい。
その顔からは不機嫌の色が、いつの間にか消えている。

「お前は本当に馬鹿だな、馬鹿!おたんこルカ!そんなんだからいつまでたってもおたんこルカなんだよ!」

「あの・・・意味がわからな・・・」

思ったことを正直に口に出せば、彼は拗ねたように唇を尖らせ、自分の頭の上に置いていた掌を退けてしまう。

温もりが消えたことが寂しくて「あ・・・」という声が出てしまった。
途端、空中で止まる手。

どうしたのかと彼を見ると目を見開いて固まっていた。
心なしか頬が赤く見えるのは気のせい?

「・・・イリア?どう、したの」

「・・・おおお、お前のせいだろおたんこルカの馬鹿!阿呆!」

「えぇっ!?」

なんだか一種類言葉が増えてる気がする。
叫ぶ彼の顔は耳まで赤い。


「ばか!馬鹿!バーカ!お前のせいで喉が渇いたじゃねぇか!さっさと水でも持ってこいおたんこルカ!!」

「はいぃっ!」

こう怒鳴られては逆らう気もなく、言われるままに水を取りに行くため部屋を出る。
同時に部屋に入ってきたスパーダにぶつかりかけたが、なんとか避けルカはその場を去っていった。





「素直じゃないねぇ」

「・・・何がだよ」

「ルカの気を引きたいんなら抱くなりキスなりしちゃえばいいのに」

「ん゛なっ!?!っのバカ野郎!!!」

「それともこのスパーダ様が、事故に見せかけた素敵なアクシデントを起こしてやろーか?ぐひひひ」

「余計なお世話だっ!!!」


などという会話が繰り広げられたことを、ルカが知ることはなかった。






++++++
大好きだけどいまいち上手く書けない・・・。
とりあえずルカが一途な鈍感ちゃんでイリアがツンデレしてれば可愛い。

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