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おかしな二人14
「調子悪いの?」
「ははは・・・今日何度目かな・・・それ」
一時限目を休んだオレは、なんとなく昼休みをいつもと違う場所で過ごしたくなって、なんとなく移動してたらたまたまテオに出会いそう言われた。
そんなに死人顔なのか今日のオレって・・・。
「何か・・・堪えてるみたい。悪いことでもあった?例えばガラの悪い上級生にからまれたとか」
「あ〜・・・ガラは悪くないから大丈夫だ」
とか言いつつ「堪えてるみたい」という言葉にドキリとして内心超ヤバイ。
テオは本当に鋭いから時々困る・・・。
なおも言い募ろうとするテオに冷や汗をかき出したとき「テオ〜」と遠くから呼ぶ声が聞こえた。
テオの顔が不快に歪む。
「ど、どうしたテオ?!」
「・・・うぜぇ」
「え・・・」
「お〜やっと見つけた。探したぞテオ〜」
近づいてきた人物を見て光太は目を見開いた。
整った顔。形の良い目鼻立ち。僅かに明るいダークブラウンの髪。さらに彼の背後二メートルを境に集まった女子生徒。
知る人ぞ知る二組のプレイボーイ、樫原泰斗。
爽やかな笑顔を振り撒き、ごく自然にテオの肩に腕を回した・・・が、瞬間テオの肘打ちが唸る。彼はなんとかかわしたようだ。
「何だよテオ。危ないじゃんか」
「・・・消えろ、五秒以内に」
「え〜、ヤダ」
ギロリと樫原を睨み付けるテオ。そのままオレの方へなんとなく避難してきた。彼が苦手らしい。
「ん?てゆか君誰?」
樫原の視線がこちらに向けられた。わーいとばっちり・・・。
「一組の三ヶ谷光太・・・」
「何でテオと一組の奴が一緒にいるの?同じ中学出身?」
「いや・・・委員会一緒だから」
「光太につっかかるな。今すぐ消えろ」
「え、お断る。テオが道連れならいいけど」
「死ね」
ここまで個人に辛辣なテオは初めて見た。結構怖い。
それに動じない樫原もすごいけど。
「えっと・・・オレそろそろ行くわ」
「光太、一緒に行く」
「何言ってんだよ!テオは俺と先約があるだろ!」
「黙れ。舌噛んで死ね」
「噛んでほしいわけ?」
「シネ変態」
「テオと一緒になら」
「野垂れ死ね。孤独死しろ。人のいないとこで死ね」
なにこの怖い応酬。
巻き込まれてもいいことが皆無っぽいので、テオには悪いがそろそろと場を離れる。気づいたテオがこちらに来ようとするが、樫原が阻んだ。テオが彼に膝蹴りやら拳を飛ばしている。全てかわされているが。
遠目から見れば友達がじゃれている光景に見えないことはないのだが・・・。
口の悪い珍しい姿を記憶に残しつつ、光太はやっぱり教室に戻ることにした。
ざわざわとした喧騒に耳を傾けているとなんだか落ち着く。
昼食中の優利がほっぺにご飯粒つけたまま声をかけてくる。指摘したら顔を真っ赤にして梓緒の影に隠れた。頭をよしよしされている。
幼さの残る優利を微笑ましく見つつ、席に戻った。手持ちぶさたに机の上のシャーペンをいじる。
あの日から横井比奈の連絡は途絶えた。姉の方にも何もないらしい。
嫌われたんだろうな。
ズキリと痛む胸は自業自得だ。たくさんの嘘を彼女にはついたのだから。
だけど、楽しかったのは本当。
嬉しかったのも本当。
もう二度と彼女には会えないだろうけど、感じたもの偽りはないから。
今はまだ過去と割り切れないけれど、胸は痛むけど、つっかえていたものは取れた。だから立ち直れる。そう思った。
+++
「ただいま・・・」
返事がないのは知ってても、癖のようなものでそう言う。
靴を脱いで、いつもなら部屋に上がるところをリビングに入った。冷蔵庫のジュースを適当に喉に流す。
「あー・・・・・・」
こんなに引きずるとは思ってなかった。
多分、初恋ではないけど、今まで本気で一緒にいたい誰かなんていなかった。だから余計にかもしれない。
「参ったなあ・・・」
暫く周りに心配かける。
力なくソファーにこてんと横たわった。ぐりぐりと頭を背もたれに埋め込む。
ピンポーン・・・
インターホンの音。お客さんが来たらしい。
「はーい・・・」
返事をして、だれている顔を張り手で引き締める。ごく自然にと心がけて玄関の扉を開けた。
「どちらさ・・・」
息が止まった。
何で?
どうして?
「・・・こんにちは」
扉の先に横井比奈が立っていた。
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