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おかしな二人3
正直、見とれた。
確かにオレは普通の男子と違って女物の服を見たり、着るのが好きだけど、決して男をやめてる訳じゃない。
可愛い女の人を見れば興味を抱くぐらいする。
だがしかし、今の自分はカツラ+女子高の制服姿なのだ。同性があまり見とれるのも怪しい。いや、多分同性でも見とれそうだけど。
って、そんなことはどうでもいいんだよ。
「本当にごめん。怪我・・・とかしてませんよね?」
「別に・・・こっちこそごめんなさい。あなたも大丈夫?」
慌てて立ち上がり、上半身だけ起こしていた彼女に手を差しのべる。彼女は躊躇なくこちらの手を握った。それにドキマギしながらも手を引けば、当然だが相手の顔がぐんと近くなる。
『う…わ…!』
思わず息を呑んだ。
肩まであるライトブラウンで少し癖のある髪にヘアピンをつけた少女。
大きなぱっちりとした瞳はキラキラしていて今にも吸い込まれそうだ。
スッとした形のよい鼻や小さな赤い唇まで実に整っている。
極めつけは透き通るほど白くしっとりとした肌。
同じデザインの制服を着ているということは、女子高生なんだろう。
同年代の、綺麗な女の子。
先ほどの葛藤など忘れて、じっと見つめてしまう。
「・・・・・・・・・いい」
「ふぇ?」
夢中になりすぎて、彼女がぽつりと呟いた何かを聞きそびれた。
そこで未だ手を握ったままに気づいて、大慌てて手を離す。
「ごっ、ごめんなさいっ!」
「え?あ、別に気にしてないけど」
危ねぇー・・・。
いくら女装して外見を誤魔化してたってオレは男なんだ。
手だって多少骨張っている。
繋いでたら違和感に気づかれてしまうかもしれない。
危険を冒していたことに内心冷や汗をかきながら、少女との距離を離す。が、
「ねぇあなた何年生?」
ピタッと体を止めた。
まぁこれだけ見ていたんだから、少しくらい詮索されてもおかしくない。さらに同じ制服まで着てるんだから。うん、話しかけられるよね。
しかし、しかしオレは駄目だ。だってこの制服姉ちゃんのだし!つかオレ男だし!ヤバイよヤバイよ!?
タラタラと冷や汗をかきながら質問に答えるべく口を開く。
「ぁ・・・えと・・・一年生です・・・はい」
「あ、同年だったの?何組?」
どうやらタメだったらしい。親しさを感じてくれたのか、今度は顔を覗き込まれながら質問を重ねられる。
ドクン、て心臓が跳ねた。
「えっと・・・一組・・・」
「あぁそうなんだ・・・私四組だから知らないはずよね」
恐る恐る答えたら、幸い都合よく違うクラスになってくれたらしい。
普通校一年一組三ヶ谷光太。当然ながら女子高校には存在しません。
そんなオレの心の動きなど知らない彼女は答えに納得してふわりと微笑む。
か・・・可愛い・・・!
多分うちの学校にいたらマドンナ確定だよ、この人。頭の中に友人達の顔を思い浮かべ『あいつらなら即落ちだな・・・』なんて考えてしまう。
それくらい魅力的な笑顔だった。
「ねぇ名前なんていうの?」
「えっと・・・」
ごく自然な流れで尋ねられて口ごもる。こればっかりは正直に答えられない。ぐるぐるする頭で必死に考え、考えて捻り出した答えは・・・、
「・・・三ヶ谷・・・ヒカルです・・・」
姉からの愛称だった。この時だけ、名前として使っても不自然じゃない呼び名で良かったあと心から感謝。
彼女も特別、違和感を覚えなかったらしい。変わらぬ笑顔で見つめ返してくれた。
「三ヶ谷さんっていうの?私は横井比奈」
横井比奈。名前を何度も心の内で繰り返す。名前まで可愛らしい。
ボソッと名字だけ呟くと比奈はふふって笑って肩を揺らした。
うわぁ!可愛い!!
心臓がドキドキと騒ぎだした。頬が心なしか熱い気がする。威力が、ヤバイ。
「よろしくね三ヶ谷さん」
「はい・・・」
その後何言か喋っていたが全て上の空だった。最後に「じゃあ、また学校で」と手を振って歩き去っていく彼女に、放心したまま手を振り返す。
ほぅ・・・・・・。
・・・・・・夢みたいだった。
・・・可愛かったな比奈さん。
学校かぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?。
「ハッ!?」
学校!?えっそれって。
ヤバくないですか!?!
普通高校一年一組三ヶ谷光太。
決して女子高校の一年一組の生徒ではない。
「やっちまったああぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!!」
夕方の空に、そんな叫び声が響き渡った。
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