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おかしな二人2



「・・・・・・・・・」

ひょいとハンガーを手に取り、掛けられた物を見つめ・・・また戻す。

オレ―光太(女装中)は現在、姉の下着(ブラ)を買うに当たって相当悩んでます。
別に女性の下着売り場にいることに興奮と背徳感を覚えてるとかではない。むしろ、オレの状態は呼吸の乱れもない“平静”そのものだ。
それもこれも、姉から服を借りる度に、いちいち下着まで押し付けられているせいだ。
オレは着ないと言うのが分かっていながらブラだのショーツだの平気で渡してくる。
そのやり取りの回数を重ねた結果、耐性がついてしまったわけだ。
男としてどうかとも思うが、ついてしまったものはしょうがない。

ちなみに、オレは女装してるけど下は色気ゼロのシャツとトランクス。
別に女になりきりたいわけじゃないから下まで女物に身を包むことはしない。
変わってるけど、オレは男なんです。


そんなことを考えながら新しい下着を手に取り、見て、戻すを繰り返す。
何度目かに買い物メモをじっと見返した。
メモには丸っこい姉の筆跡でこう書かれている。


『お姉ちゃんの下着はヒカル目線から可愛いと思うものを二つ。ちなみにサイズは○○だから』

書かれた姉のサイズに、唇がひくついた。


「んなでかいもん探せってぇのかあの姉は・・・!」

くしゃりとメモを握り潰し、目の前のハンガーに付いたサイズタグを凝視する。

姉の指定サイズはそれらの中にほんの一握りしか置いていない。


つまり、デザイン優先で見てもサイズが違っているものばかりなのである。だからといってそのサイズに絞って見ると可愛いと思えるものがない。

「ふざけるなよ・・・あのデカ乳・・・その発育をオレの身長に寄越せってんだ」

ぶつくさと文句を言いながら、それでも律儀に可愛いものを選び、サイズを確認して指定に合うものを探す。

結局その作業だけで一時間近くかけ、オレはやっと洋服屋を後にした。






「はぁ・・・もう日が暮れるじゃん・・・とっとと帰らないと」

ふぅと溜め息を吐いて、両手に握った買い物袋をよいしょと持ち直す。
片手には姉のお使いを、もう片方には姉からのご褒美「余りで買った好きなもの」。
そこには一着の服が入っている。可愛いと一目惚れしたちょっと値段の張る手の込んだ物。
正直「高いからなあ・・・」と最初は諦めていた。だが、予算以内だったし、姉の下着選びに時間を食った腹いせに遠慮なく買わせてもらった。
収穫物を一刻も早く着てみたくて気持ちが上向く。気持ち急ぎ足で帰り道を進んだ。


そういう時に限って前方不注意はよく起こるもので。

曲がり角を抜けた瞬間に人とぶつかってしまった。

「きゃっ!?」
「うわっ!?」

各々悲鳴と共に地面に転ぶ。
しまったと胸の内で舌打ちをしつつ光太は慌てて飛び起きる。


「す、すみません。大丈夫ですか?」


声は気持ち高めを心がけて、仕草にも気を付けることを忘れない。
急いで謝罪するために相手を見た。

固まってしまった。



「いたた・・・」

オレの正面でぶつかった人物が顔を歪めながらゆっくり起き上がる。


それは見たこともないほど可愛い顔をした、女子高生だった。



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