ライン

片側通行



例えば運命が百万回交差したとしても、君はきっと僕を忘れ、僕以外の誰かと生涯を刻むんだろう。





こんなに愛してるのにね。

全ての恋が成就するわけではないと始めから知ってる。

でも、君の事を愛した回数は誰よりも多いんだ。
僕は・・・。






一つ、小さな種をプランターに植えてみた。

肥料をあげて、水も毎日あげて。

数日後に小さな芽が顔を覗かせた時には思わず顔を綻ばせた。


小さな命。


人間のエゴで愛でられたり、摘み取られる命。


少しずつ育っていく植物。

柔らかいけど、強かなキミをゆっくり愛でる。


育て、育って、育ってね。


大きくなったキミに蕾がつきました。
今日、君が誰かに告白したと聞きました。


キミの蕾が少しずつ膨らんできました。
今日、君と見知らぬ誰かが手を繋いで歩く姿を見かけました。

キミは今にも咲きそうです。
君はもうすぐ、僕を忘却の彼方におしやるでしょう。


嗚呼まるで、キミの成長が君の誰かへの愛が大きくなるのを示しているみたいで・・・握り潰してしまいたい衝動に吐き気がする。


もうすぐ、嗚呼もうすぐ花が咲き誇るだろう。


ねぇもしも・・・今ここでキミを摘み取ってしまったら。
キミをへし折ってしまえば。
キミを倒してしまったら・・・。







そんなこと出来る筈がないけどね。
くすりとキミに笑いかける。

結局僕は、君を傷つけることを恐れているんだ。

君に想いを告げる強さすら持ち合わせてない臆病者。



だけどずっと昔に、何十回前の交差で君が言ってくれた。


「あなたは怖がりじゃないよ。あなたはそれだけ優しいの」


その言葉が唯一、君が僕に言ってくれた、僕のイイトコロ。
その言葉がより僕を臆病にさせて、僕に何にも変え難い温かい気持ちをくれた。



さぁ今日も水をあげるよ。

憎たらしいと思いながら、何よりも大事で可愛いキミに。

さぁ早くその大輪を咲かせておくれ。
例えその瞬間、君は誰かと結ばれて、僕を忘れてしまうと分かっていても、僕は君を忘れはしない。


だってもうこれが何回目。

見えない未来で、それが更に積み重なったとしても、僕が君を愛する気持ちだけは永遠に変わりはしないから。


そして・・・きっと僕はこの先も君への気持ちを臆病に隠すんだ。

構わない。構わないよ。愛されないとしても。

片側通行だけでもいい。君と運命が交差するだけ、それだけで幸せ。


ほら今日も水をあげるよ。


嗚呼やっと、花びらがそのヴェールを開いた。


「こんにちは」


綺麗だよ。

綺麗な花。

僕が育てた花。




次の日、君と誰かが幸せそうに寄り添う姿を見つけた。


幸せそうに笑う君。

僕は思わず顔を綻ばせた。



「お幸せに」


もう何万回も愛したあなた。

そしてこれからも愛し続けるあなた。







++++++
純愛が大好物ですが書き出すとちょっと歪みがちらつくんです・・・うむぅ・・・。
でもまだこれはマシかなぁ。

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