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紅桃-再会・衝突・喧嘩-




「凪沙、客が来たぞ」
「まりゅくしゅあんてゅにゅにゅす〜・・・」
「・・・と、こんな状態だが御客人」

貴景に通された部屋で倒れている少女はなんとまあ酷い状況だった。

被っていた日除けは脇に投げ出され、服は倒れているからシワだらけ。
クッションに顔を密着させてうつ伏せになっている凪沙は、傷心のあまりとてもみっともないことになっている。

背後をチラと伺うと、呆れと申し訳なさを混ぜたような表情で柏螺が凪沙を見つめている。

はぁという溜め息を吐いて貴景が肩を竦めた。彼からすれば慣れているだろう喧嘩も、今回はお手上げらしい。



「・・・な、凪沙?」


意を決した柏螺がおそるおそる名前を呼ぶ。と、今まで気だるそうに転がっていた凪沙の動きがピタリと止まった。

「あの・・・なぎ、」
「・・・来んなボケッ!!」

ぼすんっと勢いのよい音とともにクッションが柏螺の顔面に激突する。

「バカっ!アホっ!大バカ!どアホぉっ!!」


そのまま連続で凪沙の被り物やら、多分貴景の所持品だろう小物が宙を舞い柏螺の体へ。

紅苑は飛び交う物からとばっちりを受けぬよう杏架を庇いながら、部屋の隅に避難した。
貴景も慣れたものでテーブルを立てて盾としている。


「いたっ、お前・・・ぐっ、ぅ・・・いい加減にしろよっ!!」


止まない攻撃と罵倒に最初は守りに入っていた柏螺が堪らなくなり大声で怒鳴る。
ピタリと得物を振り上げたまま固まる凪沙。

大きく声を張り上げた為に柏螺は顔を赤くし、肩で息をしている。

とりあえず沈静化したらしい場にゆっくり紅苑達と貴景が顔を出した。


「凪沙、お前に聞いてないことがある」

「・・・?クーちゃんにキョーちゃん?何でここにいるの?」


どうやら凪沙は二人がこの部屋にいることを認識していなかったらしい。
それに貴景と柏螺が「クーちゃん?」と首を傾げたが・・・両方とも突っ込まずに話を進める。


「動機を聞いていなかった。どうして・・・柏螺と仲違いしたんだ、凪沙?」
「そ・・・れは・・・」


チラと凪沙が柏螺に視線を移す。言いたくないのだろう。けれど、言わなければそのままだ。
この僅かな重圧は耐えがたいのだろう、凪沙は紅苑を真っ直ぐに見て口を開いた。


「柏螺・・・が・・・無茶苦茶な事ばかりするからよ!この間だって怪我をするってわかっててバカなことしたの!アホとしか言いようがないと思わない!?」


その言い分にカチンときた柏螺も黙っちゃいれないと口を開く。


「なに訳の分からないことを勝手にペチャクチャ言ってんだお前!いつも無茶苦茶なのは凪沙じゃねぇか!この間だって無理難題、言い出しやがって!」
「はあぁ?それとこれとは関係ないでしょ!」
「いいや!関係あるね!そもそも、何で俺が何の理由も無しに無茶しなきゃならない状況になったのか!お前の我が儘のせいなんだぞ!」
「あんなお小言本気にしたわけ?バッカじゃないの!!ていうか私頼んでないし!やる必要すらないじゃない!」
「はぁ?行け行け命令してた奴が何を言ってやがる!大体・・・!!」


始まった論争。

傍観者@杏架
言い合う二人を見てポカーンと事を見つめている。
傍観者A貴景
言い合う二人を見てやれやれと頭を抱えている。
傍観者B紅苑
言い合う二人をただ無言で見つめている。


ヒートアップする二人。
多分、会っていなかった分もぶつけ合っているのか簡単に終わりそうにはない。
「あぁ、もう頭痛いな」といった風に貴景が自分の頭を抱えたのと、同時に紅苑の肩が僅かに震え出す。
いち早く気づいた杏架が首を傾げながら彼を見上げた。



++++++
中途半端に切ります。

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