紅桃-離脱・決定・節介-
少年の名は柏螺(ひゃくら)。
少年は凪沙の幼なじみでお隣さんという関係で。近すぎる関係というのは近い分、それだけ衝突が多い。
「結論から言うとね、喧嘩したわけです」
苦笑しながら話す凪沙を紅苑は真っ直ぐ見つめている。
「いつもならここまで引きずらんのだけどねぇ〜・・・なんか熱くなっちゃって」
「それで傷心の果てにやけくそか」
「はうっ!読心って怖いわぁ〜」
そう、凪沙は傷ついていた。
記憶のない紅苑と杏架では友の価値というものがよく分からない。
けれどそれが人にとってどれだけ大切であるかは推測できる。
近しい人間なら尚更、離れている時は辛いだろう。
「ナーちゃん大丈夫?」
「んにゃあ、キョーちゃんったらそんな不安そうな声出さないでよ〜。元はと言えば喧嘩した互いに責があるわけだし・・・自業自得?」
そう言いながら無理して笑う凪沙はどう見ても痛々しい。
「・・・紅苑さん」
くいくいと杏架が紅苑の服を引いた。
見上げる瞳が静かにこう訴えてくる。
どうにかしてあげたい、と。
「・・・つまり凪沙は仲直りがしたいわけだな」
「ほぅえ!?やややっ別にそんなんじゃなくてだねぇ」
「『ドキドキ!ナーちゃんの仲直り大作戦』だね!」
「ちょっとキョーちゃんまで!?」
「とりあえずさっきの柏螺を探さないとな」
「どうしよう?私達の話を聞いてくれるかな?」
「俺たちは余所者だからな、最初は警戒されるだろうが話せばなんとかなるだろう」
「じゃあどうやってナーちゃんと仲直りさせる?」
「そこは本人に聞かんことには・・・おい凪「ちょーーっとタンマァッ!!」
大声で話を進める二人を止めに入る凪沙。
顔は真っ赤、息は荒く肩が上下に揺れていた。
「・・・本気なの?」
「何がだ?」
「だから・・・その」
「『ドキドキ!ナーちゃんの仲直り大作戦』?」「おぅ・・・!」
「一度巻き込まれたことを片付けないままというのも気が済まないからな。関わったからには出来る範囲で手伝うが?」
「紅苑さんの言う通りー!頑張ろうナーちゃん!」
まるで遊びに出掛けるくらいのはしゃぎっぷりで張り切る杏架と頷く紅苑。
頼もしい視線を投げる二人からの申し出に凪沙は顔を赤くして、
「・・・や、やっぱムリイイイィィィッ!!!!!」
ダダダダダダッ・・・!
脱兎の如く走り去ってしまった。
取り残される紅苑と杏架。
「・・・どうしよう紅苑さん」
その問いかけに紅苑はふむと顎に手を当て暫く思案する。
そして傍らにいる杏架の顔をじっと見た。
「杏架」
「ん?なぁに?」
「お前は・・・あの二人を元に戻してやりたいと思うか?」
それは一つの確認。
本人が逃げてしまった以上、これから先の行動はただのお節介の他何でもない。
それでも続けるか。否か。
杏架は真っ直ぐに紅苑を見上げたまま、にこりと笑顔を見せた。
「うん!仲直りしてほしい!
だってナーちゃんすごく悲しそうだったんだもん!そんなの見たら放っておけないよ」
「・・・そうだな」
小さく二人で頷く。
紅苑はざっと回りを見回して言った。
「あの様子だと凪沙から和解させるのは至難だろうからな・・・とりあえず話した通り、先ずは探すか」
誰をと言わなくてももう目的ははっきりしている。
紅苑の提案に杏架は力強く頷き同意した。
++++++
気づけばお節介さんと化している紅桃コンビ。
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