ライン

紅桃-接触・消沈・乗り込み-




適当に(それでも頭に地図を作りながら)二人は町を歩く。
すると偶然にも例の少年をすぐ見つけることが出来た。

背を丸めて疲れたように歩いている。

紅苑は杏架に目配せをしつつ少年との歩幅を縮めた。
そして「おい」と声をかけながら肩を軽く叩く。

振り返った少年は紅苑の顔を見るなりサァッと顔を青くして体を強ばらせた。
逃げる、と察した紅苑は端的に凪沙は居ないと少年に告げ、話がしたい旨を伝える。


少年は辺りを警戒しながらも大人しく彼の声に耳を傾けてくれた。


「・・・何の用かな?」
「ナーちゃんと仲直りしてください!」
「は・・・?」

「まて杏架、それはいくらなんでも急すぎるぞ。
あー・・・話を凪沙に聞いたんだが、どうも仲違いをしたと?」

「・・・それが本当だとしても貴方達には関係ない」

口を引き結び正論を言う少年。
その表情は翳っていて、先程杏架を心配してくれた時よりも明らかに暗い。


「確かにその通りだが、巻き込まれたコチラとしてはこのまま見過ごすのも気が引けてな」
「うんうん!」
「余計なお節介だとは十分に承知しているが、少し話を聞かせてもらえないだろうか?」
「できないでしょうか!」

自分より年上の青年と年下の少女に挟まれて少年は困ったように視線を動かす。


「・・・一つ質問してもいいですか?
町の人じゃない貴方達は何をきっかけに凪沙と?」
「とばっちりだ」
「え?」


事の詳細を少年に話すとみるみる内に彼の表情が気の毒なものへと変化した。
話終えれば直ぐに「すみません・・・」と少年が謝る。
本当に彼は心が優しいのだろう。


「さて、こちらの事情は以上だ。どうする?」


暫く少年は何事か悩むように顔を伏せていたが、ゆっくり顔をあげこちらを見据えて口を開いた。




一方。

「あ゙〜〜〜っ、ああ゙ああ゙〜っ!」


とある民家にてダミ声に近い呻き声が地を這うように響いていた。

それを傍らで見つめる少年がはぁと息を吐いて声の主に向き直る。


「今回は随分引きずるじゃないか、凪沙?」
「はうなぶるぐにぁやばりゃ〜・・・」
「一体何語だよ・・・」


クッションに顔を突っ込んだまま動かない凪沙を見つめ少年はもう一度息を吐く。


「大体さ、君達は小さい頃から問題を起こしすぎ。しかも決まって凪沙と柏螺、二人別々に理由があってさ。本当に仲介に入る側としては面倒なんだけど」

「りょたさりゃぬぐれいはみだ〜・・・」

「・・・聞いてないなら別にいいよ」


このまま一生和解しない可能性を考えて少年はまた息を吐く。
と、玄関からノック音が聞こえたのは同時だった。


「はい」


倒れ込んだ凪沙を残し、少年は素早く扉を開ける。

「ん・・・」
「え?」

扉の前に居た見慣れぬ青年の姿に、少年は目を見張った。




「・・・どちら、様?」

扉を開けたのは眼鏡をかけた少年だった。
動きやすそうな服装をしてはいるが眼鏡のお陰でどこか大人びて見える。

答えない見知らぬ人物を不審に思ったのだろう、扉が僅かに閉まりかける・・・ところで。


「あっあー・・・閉めないで貴景」
「・・・柏螺?」

背後から止めに入った柏螺の姿を見てその動作が止まる。
貴景(きかげ)と呼ばれた少年は二人を交互に見て、柏螺に向き直った。

「どういうこと?」

「話せば長い・・・かもしれないけど、知り合いだからさ、警戒しないでくれる?」
「・・・僕に何の用?」
「あー・・・うんとなぁ・・・」
「・・・今、中には凪沙が居るから」


ピクリと柏螺の体が震える。
それを見た貴景はふぅと溜め息を吐いた。
・・・が、


「ナーちゃん居るんだねっ!」
「は?」

青年の背後から出てきた第三者の姿に固まる。
対し柏螺は苦笑いだ。

「や・・・誰・・・?」

「私は泉杏架!お願いします!中に入れてください!」
「は?は・・・?」

柏螺に頻りに視線を送る貴景。苦笑いの柏螺。
そのやり取りの間にも小さな少女はお願い!と貴景に詰め寄る。青年は無言。


「・・・柏螺」
「おう・・・」
「後でゆっくり説明してもらうぞ」
「任してください」

「はぁ・・・とりあえずドウゾ」


貴景に促され勢いよく流れ込む少女。
その後ろから貴景に会釈をして「邪魔をする」と丁寧に告げてから入る青年。
最後に幼友達である柏螺が気まずそうに入ったのを確認して、貴景は開いていた扉を今度こそ閉めた。



++++++
やっと・・・幼馴染みトリオが出せました・・・。

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