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初めての気持ち


先日、久し振りにお母さんの友達の家に遊びに行った。
当然、ママさん話に花咲かせる中私が入る隙などない。だから私はお母さんの友達の息子さんと一緒に時間を過ごす。

彼は私より二つ年下でスゴく素直な子。・・・たまに何かしら失敗をしてしまううっかり屋さんだけど、純粋に私を慕ってくれるところが本当の弟ができたみたいで嬉しくて、いつも夢中でお話をする。

その日も色んな話をしていたわけだけど、いつもと違うのは話題が私のポケモン達のことばかりなところ。
彼はまだ自分のポケモンを持っていないから、羨ましげに色々質問を繰り返し見せて欲しいとねだってくる。
ボールからポケモンを出す度に喜ぶ彼を見て「嗚呼本当にポケモンが好きな子なんだな」って思った。

そしてふと、私は何を思い付いたのか。


お母さんと帰る頃、私はライブキャスターを手に片っ端から知り合いに繋げ始めた。





「・・・で、オレが最後なんだ」
「うん」

正面に座るトウヤの問いに素直に頷くと、彼は苦笑いをした。
その苦笑いの中に、最後に連絡された悲しみが含まれていることにコトハは気づかない。


「それで?君は何を聞き回ってるの?」
「大したことじゃないけど」

手元のサイコソーダ入りグラスをいじりつつトウヤと視線を合わせる。


「トウヤは初めてポケモンを持ったときどんな気持ちだった?」
「えぇ?」


ぱちくりと瞬きを繰り返すトウヤ。
つまりコトハはポケモンへの憧れを持つ少年に懐かしさを感じて、ついでに自分以外の人は記念すべきそんな瞬間に何を思ったか聞いてみたくなった、そんな話。


「初めて・・・か。
当然と言えば当然な答えだけど・・・オレは凄く嬉しかったよ。ああ、これからコイツと一緒に強くなるんだなって、ワクワクした」
「そうだよね!やっぱりそうだよね!」


気持ちの共感に嬉しくなったコトハがバンバンと机を叩き始める。
そんな子供っぽい仕草を見てトウヤが堪らなくプッと吹き出し、コトハは己の恥ずかしさを自覚して大人しく着席する。


「ところで、そんなに嬉しそうにするってことは君も同じような気持ちになったんだ?」
「うん!ベルもそうだって言ってた!
あ、でもチェレンはちょっと違ったなぁ。確か「これが始めの一歩だと思うと気が引き締まる感じ」だったんだって」


途端、ピキンッという効果音と共にトウヤのデフォルト笑顔がぎこちなくなったのにコトハは気づかない。


「・・・ふうん、チェレン君は気が・・・へぇ」
「うん、何か大人っぽい答えでちょっとつまらなかった」
「本当だよね、ワクワクとかない返答とか本当につまらないよ」
「・・・ん?トウヤ何か変?」
「え?何が?」


微かに感じ取った違和感を指摘するが、トウヤは100%×3くらいの輝かんばかりの笑顔でそれを隠し、結局コトハは気づかない。


「でもそう考えるともっと他の人の気持ちを聞いてみたいなぁ・・・」
「誰か他にあてがあるの?」
「う〜ん・・・」


人差し指をおでこに当てて考えてみる。
う〜ん。う〜ん・・・。



「あ!ハルオさんとか、「駄目、却下」・・・あれ?」

観覧車同士のダンサーの名前をあげてみたら、その人と親しい正面の少年にあっさり却下された。

「えー?何で何で?」
「ハル兄とか、本当にろくなこと考えて無さそうだから駄目。コトハのピュアなハートを傷つけかねないし、駄目ったら駄目」
「ん〜・・・じゃあナツキく「駄目だよあんな高所恐怖症、せめてアキラにして。ね?」む〜?」


意味は分からないがトウヤが強く言ってくるのでアキラちゃんに聞くことを確定させる。


「あ、ごめんコトハ。オレそろそろ用事が・・・」


申し訳なさそうに立ち上がるトウヤに「ううん」と笑顔を見せる。


「こっちこそありがとう。また話しようね?」
「コトハの誘いなら何時でも喜んで」


最後ににこりと微笑んでトウヤが去っていく。
それを見送ってコトハも歩き出した。


初めてポケモンをパートナーにしたあの時を思い出しながら。




++++++
どうしよう、なんかトウヤがいつまでも報われない(笑)
コトハにとってはみんな友達。

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