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変わり者
君は変わっているね。
それが彼の口癖。
わたしは口を尖らせながら「わたしの勝手だわ」と言う。
彼はくすりと、まるで大人が駄々をこねる子を仕方なく見つめるような仕草で笑うのだ。
君は変わっているね。
「あら、わたしのどこが可笑しいの?」
最初に聞かれた時、わたしはそう聞き返した。
すると彼はこう言った。
君の決して積極的に人と交わらないところ、と。
君は変わっているね。
ねぇ、もう聞き飽きたわ。
どうせなら他の話をしましょうよ?
わたしは提案した。
君は変わっているね。
あなたは答えた。
君は変わっているね。
そんなにわたしは変わっているの?
別にわたしは秀でた特技があるわけでも、際立って孤立しているわけでも、他人には受け入れ難いような性癖を持ってるわけじゃないわ。
なのにわたしは変わっているの?
変なの。
わたしが変なの?
「君は変わっているよ」
あなたが微笑みながらわたしに言うのだ。
笑うな、と言いたい。
でもあなたの笑みはとても綺麗で、わたしを見下すわけでも、嘲るわけでもない。
だから止めろと言えないの。
「君は変わっているよ」
「あなただって十分変わってるわ」
言い返してやったらきょとんとされた。
次いでぷっと吹き出された。
頭を叩いてやった。
腕がすり抜けた。
「今日が最後だよ」
あなたが言った。
そうよ最後よ。
わたしとあなたと、これが最後の日。
「君は変わっているね」
それがあなたの口癖だった。
嗚呼、でもこうやって聞くのはこれが最後なのね。
ちょっとだけ寂しいわ。
「じゃあ最後にもう一度だけ。ねぇ、どうしてわたしが変わっているなんて思うの?」
小首を傾げて可愛らしく聞いてみた。
やっぱりあなたはくすりと笑って。
「こんな自分に酔狂にも話しかけてくるのは君だけだよ」
そう言った。
あら、いけないの?
「そんなことはないよ。でも君は変わり者だよ」
そうかしら?
「そうだよ。だって他の人は誰も話しかけてなんてこないのに」
だってあなた嫌われ者だもんね。
「うっ・・・人に言われると案外傷つくものだね・・・」
くすくすとわたしは笑ってやった。
嗚呼、でも楽しい時間はもう終わりね。
さようならだわ。
「さようならだね」
生まれ変わったらまた会えるかしら?
「どうだろう?会える気はするけどね」
そしたら今度はちゃんと同じ時間に生きてなきゃダメよ?
「はいはい・・・それじゃあ、お別れさ・・・」
振るわれた腕。
空中に四散するキラキラな欠片。
風に抱かれてシャボン玉みたいに消えた。
「お休みなさい」
あなたが手を振るった。
わたしの体を通過する腕。そして、
「どうか天国に行けますように」
あなたの願い。確かにわたしの耳に届いて。
++++++
状況はご想像にお任せします。
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