ライン

こだわり




「ルカくんは料理を作るのが好きなのかい?」


本日の料理当番であるルカが夕飯を作っていると本を読んでいたはずのコンウェイがそう言って話しかけてきた。

きょとんとしてルカは作りかけのシチューをかき混ぜる手を思わず止めてしまう。


「・・・えっと。」

「あぁごめんね。何の脈絡もなく話しかけて。
手、止まってるよ?」
「・・・あ、あわ。」


慌ててかき混ぜる手を再開させて先ほど投入したルゥが溶けきるのを確認する。
そうすれば後は軽く煮込むだけなのでルカは手を休めコンウェイに向き直った。


「あ・・・料理を作るのが好きか・・・だよね?
うん・・・すごく好きとまではいかないけど楽しいから嫌いじゃないよ。」
「やっぱりそうなんだ。」
「やっぱり?」
「うん。だって君、料理を作っている時とても楽しそうだもの。」


にこりと微笑んで言うコンウェイにルカは無性に恥ずかしさを覚える。
そんなに楽しそうに見えるのか?そもそも見てたの・・・?というか見られてたの・・・?


「ルカくん、顔が赤いよ?」
「ひゃっ!ああああの・・・。」
「ふふふ、別にいつも見てた訳じゃないよ。
でもたまに見かけるとすごく楽しそうだからつい、ね。」


そうは言われてもやはり“見られていた”という事実に恥ずかしさを隠せない。
どうしようもなく俯くと「困らせるつもりはなかったんだけどなぁ。」というコンウェイの呟きが聞こえた。



「・・・あ、あの。」
「うん?」
「その・・・楽しいのはその、か・・・母さんが作ってたのを見てただけで案外真似れるものなんだなぁ・・・って・・・それがなんだか・・・えっと。」

「そっか。」


口ごもりながらの説明でも彼は理解してくれたらしくまた微笑む。
あぁやっぱり恥ずかしい。



誤魔化しついでにそろそろ煮えたであろうシチューの火を止める。
小さく鳴っていた煮える音が止んで辺りが少し静かになった。




「ところでルカくん。」
「なに?」
「君は・・・野菜ジュースは嫌い?」


「・・・・・・え?」


話の変わりが急すぎてルカは頭にクエスチョンマークを浮かべる。
しかもコンウェイの顔は先程とうって変わって妙に真剣な表情になっていた。


「・・・体に良いと思うし・・・嫌いでは、ないけど。」
「そう、それは良かった。
実は少し相談があってさ。」


相談、そう聞いて変な緊張がルカを襲う。
この僕に相談?しかもコンウェイが?
何だろうと不安半分、好奇心半分でコンウェイの次の言葉を待つ。


「僕はね、野菜ジュースが結構好きだったりするんだけど・・・自分で作るよりある人に作ってもらったものの方が味が良いからさ・・・。」


そこまで言うと一度口を閉じるコンウェイ。
それを聞いてルカは首を傾げた。
これのどこが相談なんだろう。仲間の皆ならコンウェイが頼めば誰でも作ってくれる気がするのに。


「えっと。頼みづらいってこと?」
「いや、頼んだんだけど断られてね。」


驚き目を丸くするルカ。
頼みを断るだなんて誰なんだろう?アンジュやリカルドならきっと断ることはないだろうしエルマーナやキュキュだってきっと快く承諾しそうだ。

「断られた・・・ってもしかして・・・その相手ってスパーダ?
あ、でもスパーダなら・・・」
「いや、相手っていうのはイリアさんのことなんだけど。」
「あぁイリアか・・・・・・イリア?!」


意外な人物に再び目を丸くする。
そういえばイリアはフルーツジュースを作るのが得意らしいけど野菜ジュースも同様なのだろうか?


「あれ・・・?でもイリアなら時と場合によりそうだけど・・・頼めば大丈夫な気がするんだけど。」
「それは君だからね。僕が頼んだら野菜ジュースは嫌いだからってすごい勢いで拒絶されたよ。」
「・・・それなら僕が頼んでも無理なんじゃ「いや、君なら九割の確率でいける。」


ものすごい剣幕でそう迫られ思わず後退る。

何?この確信?
何を根拠に僕にそんな大役が果たせるというんだろう?
というかそんなに好きなの?イリアの野菜ジュース。


「駄目かな?」

珍しく眉根を下げて懇願してくるコンウェイに嫌とは言えない。
おそるおそる頷くと彼は嬉しそうにまた笑い「じゃあよろしくね。」と言った。



(本当に僕なんかで大丈夫かな?)
(大丈夫だから自信を持ってごらんよ。)
(僕なら大丈夫・・・僕なら大丈夫・・・僕なら大丈夫・・・。)
(自己暗示までしなくても・・・。)




++++++
野菜ジュースでコンイリなスキットに動揺を隠せなかった果てがこれだよ。
カレーしか作ったことのない奴がシチューの場面書いてみたよ。間違えて気がしてならない。

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