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親しみの代わりの殺意を
「これで僕たちはこの世界から初めて生還した人間となる。」
異次元の狭間。
そう呼ばれている不可思議な空間の大きな扉の前に二人は並んで立っていた。
その一人、先ほど喋った青年は艶やかな黒髪に鮮やかな紅のマントを羽織っている。
もう一人、話しかけられた少女は青年と対照的な淡い白銀の髪を一つに束ねている。山吹色のマフラーがひとりでにたなびいていた。
二人は静かに向かい合い、そして最後であろう会話をする。
ほんの数日前まで彼らと共に旅をしていた者が今の二人を見れば驚かざるえないだろう。
何故なら二人の間に今まで仲間であったときの親しげな空気は一切感じられない。
互いを敵と認識し合う者同士による睨み合い。
そうだ、とコンウェイは思う。
これが僕らの正しい形。
「・・・次会ったらキュキュは、コンウェイ、殺す。」
少女のものとは思えないような低い予告の言葉が二人だけの空間に響く。
いつもの無邪気さなど微塵もない兵士の殺意を孕んだ声に青年は静かに微笑んだ。
今この瞬間をどこまでも楽しんでいるような挑発的な笑みはただキュキュだけに向けられている。
「だったら、次会う時は敵同士・・・・・・容赦しないよ。」
少女に殺意と親しみを込めて、コンウェイは言い放つ。
キュキュもその言葉を聞いて目を細めて微笑んだ。
そんな敵の微笑みがどうしようもなく胸を昂らせる。
敵であると知りながら、仮初めの仲間として時に助け、時に助けられた。
そして何時からかこの感情に気づいた。
例え相手が同じ感情を持っていたとしてもけして相容れることのない、想いに。
『僕も相当、歪んでいるのかもしれないね。』
キュキュからの殺意をこれ程までに愛しく思うこと。そしてそんな彼女を愛しく思いながら躊躇なくその胸に刃を突き立てられるであろう確信。
ゆっくりとコンウェイは自分の世界へと戻る扉へ歩を進める。
キュキュも自分に続いて歩いてきたのが足音で分かった。
扉が閉まる。
無垢で優しい、自分達にはない光を持っているかつての仲間達がいる世界が遠ざかっていく。
キュキュが足を止めた。
気づかれぬよう盗み見ると彼女が愛しげに扉が閉まる様子を見ているのが分かった。
扉が、閉まる。
仮初めであった筈の仲間という絆が、途切れる。
最後にもう一度キュキュを真正面で見据えた。
「楽しみにしているよ。」
君の琥珀色の瞳が殺意で僕を貫く日を。
殺し合う宿命をその身に感じながら、二人の感覚は真白に消えた。
++++++
歪んだ感じの愛とか結構好きだったりします。
殺し合いップルいいですよね。
でもラブラブもほしい・・・。
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