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ホントの“仲間”


キュキュが“あっち”の人間だったら、コンウェイが“こっち”の人間だったら。
二人は、今この旅で本当の“仲間”になれていたんだろうか?





「コンウェイ。」

厳しい声音を滲ませて少女が悠然と読書にいそしむ青年を睨み付ける。
コンウェイと呼ばれた青年はゆっくりと顔を上げた。

「どうしたんだいキュキュ?随分とご機嫌がナナメのようだね。」
「そんなこと、ない。」「そう?」

小さく微笑んでコンウェイは読みかけの本を閉じる。
飄々とした態度が実に腹立たしい。


「コンウェイ。今日の戦闘、手抜いたか?」
「抜いていたように見えたのかい?」
「ふざけてるよに見えた。」
「ふざけてるわけないじゃないか。ボクにはやらなければならないことが有るからね。
それまでに死ぬような真似はしないさ。」

彼の言葉にもう一度睨みをきかせる。
コンウェイは苦笑して肩をすくめた。


「何が気にくわないんだい?」
「別に。だがコンウェイ、なぜキュキュの質問、答えない。」
「答えたじゃないか。」
「あんなの答えと違う!」


つい声を荒げてしまった。しかしコンウェイは変わらず涼しい顔のまま。


「怒りっぽくなったね、スパーダくんに似てきたんじゃないか?」
「ヘンな帽子に・・・?」

「キュキュ。」


真剣味を孕んだテノールの声が名を呼ぶ。
それがまるで金縛りであるかのように、彼の瞳から目を逸らせなくなる。


「キミはキミの目的を果たしたいんだろう?だったらボクのことなど気にしなければいい。
ボクらが不仲だという気配を少しでも“仲間”達に勘づかれれば目的達成に不利益なのは目に見えている。そうだろう?」

「・・・・・・。」

「気持ちを切り替えなよ、キュキュ。そうでなければアンジュさんやリカルドさんに気づかれる。
・・・スパーダくん辺りもたまに鋭いからね。気をつけるにこしたことはない。」


そうアドバイスじみた言葉を言ってコンウェイは静かに立ち上がった。
「どこへ行くか?」と聞いたら、「本を読む場所を変えるだけだよ。」と返される。


「キュキュの質問に、答えずか?」
「だったら改めて返答しよう。
キミが感じ、思ったままが答えだよ。」


微笑を浮かべたままそう言葉を吐き出す。
嗚呼、その態度が、言動が、

「・・・ムカツク。」
「何か?」

「コンウェイ。」


また彼を睨み付ける。
彼を凝視して、その動き一つでも見落とさないくらい、彼だけを視界に捉える。


「キュキュは・・・、戻ったらキュキュはコンウェイを――。」

「・・・そう。」


突拍子もないはずの言葉に対してもコンウェイの態度はひどくあっさりとしたもので、まるで関心がないように感じるその口調は冷めたもの。
キュキュだけに見せる、コンウェイの冷たい顔。


「だったら尚更仮初め“仲間”を演じなよ。戻るためには生きていなければ意味がない。」


コンウェイが踵を返してキュキュの元を離れる。
一人残されたキュキュは力なく足元に視線を落とした。


あれが、コンウェイが自分だけに、同郷の人間のみに見せる姿。
温かさも気遣いもない冷たい態度。あれがあるべきコンウェイの姿。

じゃあ。
じゃあ、“無垢な絆”のこの世界の仲間達に見せるもうひとつのコンウェイは何なんだろう?

仮初めなのだろうか?

偽物なんだろうか?


そう考えておいてから首を振る。
そうではない、きっとあれもコンウェイそのものでありのままの彼なのだ。
見ていても分かる。全ての仕草が自然だから。例えそれが自分だけには向けられなくても。


冷たい彼と、温かい彼。
刺すような視線と、慈しむような視線。

――ことになる相手であると心で理解しながら、旅で共にいるのが温かいと思う自分もいる。



「・・・コンウェイ、ムカツク。」



彼が“こっち”の人間だったら。
自分が“あっち”の人間だったら。

きっとどこにも戦う理由などなく本当の“仲間”になれたのに。





++++++
コンキュ書けなかった。
誰か僕に甘いコンキュください。

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