無邪気なフリをする
「ルカー。」
「なに?イリア」
「キスしてみよっか?」
どさっどさどさどさっ!
盛大な雪崩の音と共に銀髪の少年の傍らに積まれていた本が一つ残らず床に叩きつけられる。
いつもなら「あぁっ!」と悲鳴の一つでもあげ急いで拾い上げるだろうに、彼は目を見開いたままこちらを凝視して固まっている。
「・・・い、イリア。今なん、て・・・?」
「だから、キスしてみようって。」
途端真っ赤になる彼の顔。
陸にあげられた魚のように口をぱくぱくと開閉している姿は明らかな動揺の証。
「どうかしたの?」
「いや。だって・・・その、急に。・・・そんなこと・・・を・・・!」
「もしかして、嫌?」
こてんとぶりっ子のように首を傾げて見せれば相手は頭が変になりそうなほど勢いよく首を左右に振ったくった。
「じゃあいいじゃない。しましょ?」
「う・・・ぅ・・・。」
ゆっくりと近づけば耳まで赤くした形のよい顔が目一杯に瞳に映る。
紅が入り込んだ翡翠の瞳は僅かに潤み、宝石みたいにキラキラしていた。
嗚呼、どうしてコイツは女のあたしよりよっぽど可愛い反応ができるのだろう。
いっそのこと性別が逆転してしまった方が互いに得な気がする。
だけどこの乙女らしさがまた自分の嗜虐心をくすぐるのだ。
羞恥から荒くなる呼吸音を聞くだけでかなりそそられる。
あれ?いつからあたしこんなに性格が悪くなったんだろ?
多分ルカにあって、それでスパーダと一緒に彼をいじり出した頃からだろうか?
最初はただの暇潰しだったのに。今ではもう趣味の域。
別に本気でいじめてる訳じゃないのよ?だって本気でやったら確実に嫌われてる筈だもの。
だけどホラ、コイツの気持ちは最初から変わることなく自分に向けられている。
惚れた弱み?そんなの知らない。
だって私の考えは推測だから。実際ルカの好きな人を聞いてみたことなんてない。怖いし。
だけどこんなことするのは、どこまでもあたしが子どもで、いつまでも素直になれないから。
唇に唇を近づける。
お互いの吐息が顔にかかるくらい近づいたとこで一旦止まって彼の目尻を指で撫でた。
指の先が微かに湿る。
今にも溶けてしまいそうなとろんとした翡翠とそれに混じる紅が今この瞬間、彼の全てを自分が独占しているような高揚感を与えてくれているような気がした。
静かに、ルカの唇を甘噛み。
キスというにはあまりに不器用な接吻。まるで食べるように少年の唇を啄む。何回も、何回も。
仕上げにちゅと小さな音をたてて唇を離した。
体中が熱いのはきっと気のせい。
「はい!ご馳走様!」
わざとそんなことを言って、誤魔化すように体を離して。
顔を背けたところで急に力強く腰を抱き寄せられた。
「・・・言っておくけど、悪いのは先にくれたイリアなんだからね?」
銀色が視界を掠めたように見えた時にはまた唇と唇が、さっきよりも強く重なりあっていた。
++++++
僕はキスものが書けないというか甘いものが書けない自覚があるのでR発売のお陰でテンションが上がってる時に書いてみた。
結論→わけわかめ。
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