007

(ハンジ的考察)


「ナマエ、ちょっとこれ目を通しといて」

廊下を歩く彼女を呼び止めて、真面目な声で書類を渡す。そうすれば彼女は背筋を伸ばしてそれを受け取った。

「…ん?"巨人の顔50選"?」

書類の表紙を見た途端、真剣だった彼女の表情から緊張が解かれた。なんだこれはと瞬きを繰り返すから、こちらも真面目な雰囲気をやめる。

「巨人を顔で分別してみたんだ〜。行動パターンとか大きさとかいろいろ書いてあるから読んで読んで!」
「うわ、本当だ。すごいですね」

分厚い書類をめくりながら、彼女は笑った。エルヴィンやリヴァイ班の面々、ミケ、自分の班員、その他の隊員にもそれぞれ見せようと渡したが、受け取ってくれたのは数人の新兵だけだ。まぁ、彼らにもほとんど押し付けたようなものだが。

「ゆっくり読みますね」

彼女は受け取ってくれるだろうと思っていた。巨人が大好き、というわけでは決してない。ただ単純に、私がまとめたものが面白いらしい。稀有な存在だ。

「うん、ありがとう。…ところで、最近リヴァイとどう?」
「え、ええ?」
「ぶっ」

私の後ろでモブリットが吹いた。そうだった彼がいたのを忘れていた。いや、まぁ、私は構わないのだけれど。

「な、何もないですって。じゃあ、訓練あるんで、失礼しますね」

早口でまとめ上げて去っていってしまった。あぁ、実に残念だ。もう少し掘り下げてみたかった。

「分隊長、ナマエが可哀想です」
「はははっ、分かりやすいなぁナマエは」

彼女のリヴァイに対するそれに気づいたのは、彼女がまだ駐屯兵団だった頃だ。彼女は当時駐屯兵団に身を置きながら、誰よりも憧れの目でリヴァイを見ていた。今はきっと、憧れだけではないような気がするのだ。その為に、彼女は悩んでいるのかもしれないが。
どちらにしろ、

「いやぁ、巨人並みにたぎるものがあるねぇ、ほんと」
「分隊長、ナマエをあんまり苛めないであげてください」

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