逃れられない、覚醒




『ごちゃごちゃ考えるな、本能のままやりたいことをやれ』

言われた通り、考えるのをやめた。ここがどこなのか、自分は帰れるのかとか思案するのは面倒くさかった。今はただあの妖を倒して少女を助ける、それだけだ。刀を腰に差して刃を抜く。今まで感じていた恐怖はなかった。痛みも嘘みたいに無く、体も思うままに動く。

「行くぞ」

そう言って俺は目の前に立ちふさがる炎を刀で斬った。すると斬られた一帯の炎は一瞬で氷の塊と化した。それをまた斬りつけると氷は簡単に落ちて砕け、道が出来た。そこを通って入るとすぐに火車が突進してくるが俺は刀で攻撃を受け流す。火車の刀に触れた部分が凍る。

「目が蒼くなってる…」

『あの童もまた主と同じように神を魅入らせたらしいな』

目が赤から黒に戻った少女は瓦礫に寄っかかり、その隣にはウズメが立っていた。俺はちらりと少女の方を向いて無事を確認して、そして刀を構えた。火車は凍った部分を炎で溶かして、自分自身の火力を上げていた。

「鬱陶しい」

俺はそう吐き捨てて思いっきり刀を地面に刺すとそこを中心に一帯を凍らせた。動揺しているように見える火車を睨み付ける。火車は元々おうとつの激しいこの瓦礫の上を苦もなく走っていたが氷が張られたことによってバランスがとれないのかふらついていた。俺はその隙に力一杯踏ん張って火車のもとへ走る。そして少し高い瓦礫の山から飛んで、火車に刃を振り下ろした。火車は斬られたところから凍っていき最終的には氷漬けになる。そして俺は刀を一振りして、氷を粉々にした。

「倒した…のか」

『初めてにしては良かったぞ主様』

「お前説明しろよ、説め…」

妖を倒して気が抜けたからか痛みと疲労の感覚が体を占めていく。刀を持つ手に力が入らず、手から刀が滑り落ちた。それと同時に凄まじい眠気も襲ってきて、抗う術がないまま俺は意識を無くした。







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