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やわらかなからだ

リーフの身体に手を伸ばす。最初は顔から。白くてきめ細やかな肌。すっと通った鼻梁。下唇がちょっと厚い。そのままどんどん下に手を下ろしていく。首筋に手を触れる。とくとくと血液が流れる頸動脈の感触を楽しんでいたらリーフが密やかな笑い声をもらした。


「…何?」

「なんでもない。気にしないで」


そう言って目を閉じたリーフが気にくわなくて、とくとくとリズムを刻む首筋のメトロノームを圧迫した。一瞬身体が強ばり目をあける。その綺麗な瞳が見えたことに満足して手を離した。再び身体をなぞる作業に戻る。
男の僕と違って滑らかな肩、しなやかな腕。この手でいずれ僕との子を抱くのだとぼんやり考える。指先まで丁寧になぞり、左手の薬指にキス。ここは僕が売約済みだ。
一度手を首まで戻し、今度は胴体をなぞる。鎖骨の窪みを辿った先には、僕にはない、ふたつのふくらみ。感触を確かめるように押すとふにふにと柔らかくも弾力があった。肌の質感を楽しむように膨らみを撫で回しその頂点の二つの突起をつまむ。


「んっ…」

「感じてるの?」

「…うん」


リーフの眉が切なそうに寄る。その表情が僕の何かに火をつけたような気がした。胸の奥が熱い。そのまま2,3度きゅっとつまみ上げ、リーフの表情を堪能したところで誘惑を振り切りまた作業に戻る。
次はお腹。…ここに僕の子を孕むための器官がある。かつては僕も母のその中にいたところ。生命の神秘。暖めるように殊更優しく撫で回す。ここに、いつか。今は何もいないはずなのにとても愛しく思えてきて頬をつける。暖かい。しばらくそうしているとリーフが頭を撫でてくれた。指先が髪をすく感触がきもちいい。なんとなく気分が良くなって、手をお腹のすぐ下、秘密の場所に伸ばした。湿った暖かさを指先に感じると同時にやんわりと髪を掴まれる。あ、泣きそう。


「…やだ?」

「…いやじゃ、ない」


―でも、こわいの。


ならば今はやめておこう。僕たちはまだ若い。これからでもいいはずだ。お互い覚悟ができてから。焦らずとも時間はあるのだから。
起き上がって太ももに手を移す。旅をして歩き回るから足には適度な筋肉がついている。でもやっぱり柔らかい。僕はごつごつしてるのに。膝もやはり僕に比べて丸みを帯びていた。女の子というものは丸く、柔らかい。
膝下を手のひら全体で確かめ、最後に右足の爪先にキスをする。5本とも、全て。


「もういいの?」

「うん、ありがとう」


お礼を言ったらリーフが抱き締めてくれた。柔らかい身体。ふたつの膨らみが胸板にあたる。
この身体が僕のものだと考えたらふいに泣きたいような、温かい気持ちになった。
これは僕のもの。僕の大切な女の子。
僕が一生、守ってあげる。



END






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テーマ「人外ファンタジー」
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