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標識無視は通常運転

いやいや。
いやいやいやいや。
ちょっと待て。
おかしいだろこの状況。

時刻はいわゆる丑三つ時。
場所はマサラタウンにある俺の部屋。

ここまではいい。むしろ真夜中に自分の部屋にいるのは当然の状況だ。
おかしいのはここからである。

俺の部屋のベッドの上。
そこにパジャマ姿で寝ている俺。
そしてその上に覆いかぶさる幼なじみ。
やつの手はパジャマの隙間から侵入を果たし俺の素肌の上を這っている。
そして動けないでいる俺の耳元にやつの顔が近づいてきて……


「グリーン……」


耳をなめられたと同時に俺はレッドを蹴っ飛ばした。



***



時刻は丑三つ時をちょっと過ぎた頃。
場所は俺の部屋のベッドの上。
ぶすくれた顔をして正座しているレッドとその前であぐらをかいている俺。


「で、言いたいことは?」

「蹴飛ばされたお腹が痛い」

「……それ以外で言いたいことは?」

「蹴飛ばされた時にぶつけた頭が痛い」

「…………他に言いたいことは?いや、言うべきことは?」

「……グリーンのばーか」

「よしそこに直れ何で全く反省してないんだよ!おかしいだろ何で俺の部屋に侵入してるわけ?それで何でマウントポジションなんてとっちゃってたのていうか何で触ったりしてたわけ!?お前にバカって言われたくねえよむしろ俺が言いたいよ!何なのお前ほんとわけわかんねえ!大体何でこの時間にマサラタウンにいるわけ?」

「何でって……グリーンに夜這いかけるためだけど」

「何さも当たり前のことを聞いてるの?みたいな顔してんだよ!夜這いとか言うな!わかってた、わかってたよお前がやりたいことくらい!でも認めたくなかったんだよちくしょう!」

何言ってんのこいつバカじゃない?みたいな顔をしたレッドに向かって言葉をぶつけても理解していないのかそれとも理解してかつスルーしているのかレッドの反応は薄い。まあおそらく後者だろう。
はああと大きなため息をついたら「ため息つくと幸せ逃げるよ?」なんて言われてしまった。誰のせいだちくしょう。


「まあいいや。とにかくグリーン、しよう」

「……ナニヲデスカ?」

「セックス」

「……いやだって言ったら」

「押さえつけてやる」

ああそうだね、そういうやつだよねお前。うん、知ってたよ。誰よりも本能に忠実でお腹がすいたら飯をたかりにやってきて、眠くなったら勝手に人のベッドを占領して、やりたくなったら押し倒すってか。ふざけんな。こっちの意思は無視かよ。まあ一応これでも恋人という間柄だししたことがないわけじゃないし土下座してやらせてくださいお願いしますくらい言ってくれれば考えてやらないこともないんだけど。流石にこっちの都合を考えずに来られるのは頭にくる。
イライライライラ。
あからさまにいやな顔してレッドの顔を見つめていたのにやつはそれを軽くスルーして再び俺の方に手をばしてくる。パジャマの合わせ目にかけた手をひっぱたいたら不思議そうにこてんと首を傾けた。男がやっても可愛くねえぞそのしぐさ。


「ねえいいでしょグリーン。グリーンだってそろそろ欲求不満なんじゃないの?」

「あいにくお前と違ってそんなに性欲旺盛なほうじゃねえんだよ。やりたかったら一人でシコってろバカレッド」

「グリーンの目の前で自慰プレイか……それもいいな……」

「……どうしてそういう思考に行くんだよ……本当お前よくわかんない」


いいなとか言ったわりに止める気ねえし。何で勝手にボタン外しにかかってんだよ何で勝手にキスとかしちゃってんだよ。こっちはここから通行止めの標識出してんだろーが。標識無視は犯罪ですよレッドさん。


「はあっ……グリーンっ……」

「はっ……このバカっ」


結局ここで本気で抵抗しない俺もバカなんだろう。
バカとバカでお似合いじゃねえの、俺達?
なんて言ったら「そうだよ僕はグリーンバカだよ」と返された。
ああもう本当こいつ訳わかんない。でもこんなやつが好きな俺はもっと訳わかんない。
ちくしょうと心の中で今日何度目かわからない悪態をついて、レッドの唇に噛みつくようなキスをした。


END

toさあちゃん
お誕生日おめでとう!!






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