text | ナノ




機が熟すまで待つ方です

正直に言おう、Nのことは可愛いと思っている。そりゃあまあたまにこいつこの年になってこんなことも知らないのかとか、急に立ち止まって人目も気にせずポケモンと話し始めちゃって「うわ何あの人電波??うわーまじないわー」みたいな目を一緒にいる俺にもむけられたりだとか、身長のせいで見下ろされたりだとか見下ろされたりだとか見下ろされたりだとか、ムカつくことはあるけど、基本的には可愛いと思っている。知らないことは俺が教え込む楽しみもあるし、ところ構わずポケモンと話してしまうのもポケモンを大事に思っているからだし、ぽよぽよしているように見えて意外としっかりしているところもあるのだ。見下ろされているのは気にいらないけど。
まあそんな風に基本的には可愛いと思っている。ぶっちゃけて言えば好きだ。何でベルみたいな可愛い女の子ではなくこんな図体のでかい男を好きになってしまったんだろうと考えることはもうだいぶ前に放棄した。好きなもんは好きだ、仕方がない。

しかし、しかしだ、好きだからこそ困ることもある。たとえば今、この状況。
伝説のポケモン、ビクティニを捕まえに行って(まあそこでビクティニ先生に稽古もつけてもらって)久しぶりに実家に帰ってきてくつろごうと部屋に入った瞬間目にした光景。
Nが俺の部屋で無防備に寝ているという…しかも母さんは旅行に行っていない。

何これ据え膳?頂いちゃっていいの?俺今寝ていなくて妙にハイテンションなので襲っちゃいたい気分でいっぱいですよ。ああもう何でタンクトップで寝てんだよ腹とか丸見えだろうが。触りたくなるだろ。ていうかあの形の良い肩に噛み跡付けたいな。噛みついたときに苦痛の表情を浮かべるNを見たい、跡をつけて俺のものだと主張したい。でもNの性知識はまだおしべとめしべからこの間教え始めたばかりだからちょっと気が引ける。今時小学生だってもっとちゃんとした知識を持ってるぞ。まるで幼子ではないか。幼子を泣かせるのは俺のポリシーに反する。

すやすやと眠るNを前にうんうん唸っていたら捕まえたばかりのビクティニがニヤニヤと笑いながらこちらを見ていることに気付いてデコピンしてやった。おでこを抑えて床をごろごろと大げさに転げまわる姿がとてもかわいいなぁと思う。
虐待じゃない、愛だよ、愛。
俺は昔から好きな子をいじめる傾向にあった。笑っている顔も可愛いけど、泣いている顔にゾクゾクすることに気付いたのはいつだっただろう。でも不思議なことにチェレンは泣かせても罪悪感を感じなかったがベルに泣かれるのだけは弱かったな。二人のことは同じくらい好きなんだけど。

「あー…N起きないかなぁ。噛みつきたいなぁ…」

すやすやと眠るNの顔に触れたらすりすりとすりよってきた。ちょ、何この子かわいいほんと襲いたいんですけど。駄目だ駄目だ、まだ早い。もっと教育してからだよな襲うのは。深呼吸して落ち着こう。

床の上では声をあげながら転げまわるビクティニにつられてボールから出てきたユニランやモンメン達も一緒に転がり始めていた。いつの間にかビクティニも笑顔でころころやっている。まあ仲がよさそうで何よりだ。

それにしてもこいつら結構うるさいはずなんだけど、この騒音の中でも起きないなんてNは相当疲れていたのだろうか。だったら寝かせておいてあげた方がいいのかもしれない。泣かせるのはいつだってできるしな。それにもうちょっと教育して意味をわからせてからの方が羞恥心って言うものが出てきて楽しいだろうし。

気持ちよさそうに眠るNのおでこにちゅ、と一つ口づけを落とす。
とりあえず、ちょっとだけ味見。続きはまた今度にしよう。

「おーいお前ら、Nが起きるまでおやつ食べて待ってようぜ」

トウヤが声をかけるとポケモン達は一斉に集まってくる。真っ先に飛びついてきたビクティニのおでこを撫でながら部屋を後にしたトウヤは。Nが顔を真っ赤にしていたことに全く気付いていなかった。


END






「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -