dust box | ナノ



◆キョウヒュウ
2012/07/29 23:38

ヒュウくんは俺の一つ上の幼なじみだ。小さい頃は俺にとってヒュウくんはヒーローだった。俺が転んで泣きべそをかけば「泣くなよ、男だろッ!」なんて言いながら俺を背負って帰ってくれた。学校で出された宿題でわからないところがあれば教えてくれた。どこからか迷いこんだ野生のヨーテリーに遭遇し、怯えていたときも、ヒュウくんは俺を守るようにずっと抱き締めてくれていた。
ヒュウくんは俺の幼なじみで、友達で、俺のお兄ちゃんだった。

そんな大事な大事な「お兄ちゃん」に俺は今すごく汚い感情をむけてしまっている。
俺はヒュウくんが好きだ。幼なじみとか、友達とか、お兄ちゃんに対する好きじゃなくて、綺麗な言葉で言うならいわゆる恋だろう。
でも俺はこの感情が恋なんて綺麗な言葉で表せるものではないと思う。
ヒュウくんのことを考えると俺の中を黒いどろどろしたものが這いずりまわって腹の底からぞわぞわとした感覚が浮かんでくる。
たぶん、性欲ってやつだと、なんとなく理解しているこれを、大事なヒュウくんに向けている自分が気持ち悪い。ヒュウくんにこれを知られてしまったときに嫌われるのが怖い。
出口のない感情は今日も黒くどろどろと体を這いずりまわる。
いっそヒュウくんに好きだよ、なんて言って押し倒しちゃえば楽になれるのかな。なんて、出来もしないことを思いながら俺はライブキャスターを取り出した。



END





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