dust box | ナノ



◆sneke4 ※レグリ特殊設定パロ
2014/01/01 19:20

ジリリリリ、というアナログな音に起こされる。手探りで時計を探し出して音を止めた僕はベッドから出て真っ先に掃き出し窓に向かった。シャッと軽快な音をたてて開いたカーテンの向こうに広がるのは薄く雲に覆われた空だった。でも雨は降ってない。それだけで大分精神的に落ち着くのだが、ガラス越しの足元にはやはりと言うべきか、眉をひそめたくなるものが転がっていた。あの蛇男だ。まるくなって目を閉じている。昨日今日の様子から考えるにこいつはどうも夜行性らしかった。こいつがいる位置を見ると現れた時から全く移動してないように思えるがどうなんだろう。もしや夜中ずっとこのベランダでじっと僕の様子を伺っていたりしたらと考えてぞっとした。得体の知れない生き物に観察されるなんて冗談じゃない。
思考を振り払うようにカーテンを閉め直してお湯を沸かす。快晴ではないものの太陽の光を取り入れた室内で仕度をしたかったが見られているかもしれないという恐怖の方が大きかった。本当に何なんだろう、あの生物は。仕事で相手にしているようなキメラではない。キメラは確かに知能は高いし、稀に人型に近いものも存在するがああも人間らしい外観はしていない。下半身が蛇のあの生き物を人間らしいと言うのも変だが上半身だけ見れば人間そっくりなのだ。ただ、縦に割れた瞳孔が異彩を放っているだけで。

粉をセットしたドリッパーに沸騰したお湯を注ぐとコーヒーの香りが部屋の中に広がっていく。愛用のマグカップに香りのいいコーヒーを並々と注いで、食パンが焼けるのを待ちながらどうしたものかと考える。あの生き物はすごく変だ。僕の知っている生き物の範疇に収まらない。キメラがいるのだからああいうものが居たっておかしくは無い、と思うが何かが引っかかるのだ。何か。何だろう。あれを見ていると何かがぞわぞわと僕の中でうごめく気がする。それに、僕はどうしてあれを捕獲なりなんなりして職場で対応して貰おうと言う気分にならないのだろう。最初に見た時はあれの生態がわからないが故にどういった攻撃を受けるかわからないためだと自分では思っていた。しかし、それならば職場に言って、装備を借りてそれこそコトネにでも来てもらって一緒に捕獲して、後は研究班にでもまかせてしまえばいいのだ。なのに僕は、どうしてかそれをしたくないと思っている。
どこかに行ってしまえとは思う。あれを視界に入れると何とも言えない感覚に襲われるのが気持ち悪い。僕から見えない場所へ去ってしまえ。僕の心を煩わせないでくれ。けれど、その引き鉄を自分では引きたくない。こんな、自分でもわけのわからない気持ちは初めてでどうしたらいいかわからない。

けれど今はとりあえず、やっかいな仕事の方に集中しなくては。あれは他のことに気を取られながら片付けられるようなものではない。流石はもともとワタルさんたちに行くはずだった仕事だ。
面倒なこととは一気に襲いくるものだなぁとため息をつくと同時にトースターがチン、と軽快な音をたてた。



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