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「…中には知っている者もいるようだが、月山に雷門から転校生が来る」
練習後のミーティング中に、監督はこの話題を始めた。つか、全員知ってるから今更言われても困るんですけど。
「その転校生が明後日に来ることが決まった。その為、彼をここまで案内して欲しいのだが…名前、お前に頼みたい」
『…は?』
嘘だろ…。何で俺が、そんなメンドクセーことしなきゃいけねえんだよ。ぜってーに嫌だ。嫌だ、死んでもやりたくねえ。エリートさんの面倒なんか絶対に…
「名前、聞いているのか?」
『聞いてる…だけど何で俺なんだよ』
「別にお前は知らなくて良い事だ」
『…大人はそう言っていつも逃げる。あの時だってそうだ』
「名前、監督は…」
『司は黙ってろ!!』
「……我はこのチームのキャプテンだ!命令に従え!」
『…御意』
月山は日本の古い風習の慣わしがある。だから、自分より上の立場の者からの命令は絶対だ。つまり…ここは司の、監督の命令を聞かなきゃいけない。それがどんなに自分の思ってないことであっても。
「では、名前…この件はまた折り入って話す。次に…」
この後の監督の話は全く耳に入らなかった。だって、立ってるのがやっとだったし。そのせいで、気づいたらミーティングは終わっていた。チャっチャとシャワーを浴びて、帰ろう。俺は無言でグラウンドを出て、更衣室に向かった。なのに…。
「名前…名前!!」
『…』
「名前、名前!!」
『うっせーな!!聞こえてる!!』
この馬鹿ゴリラ野朗のせいで、そうはいかなかった。つか、こんな時の司って相手すんのがスゲー面倒くさいから嫌なんだよな。相手しないと、もっとメンドクセー事になるし…。
「そうか、それは良かった」
『んで、話は何だよ。そのために、追っかけて来たんだろ』
「ああ、そうだ。名前を振り向かせるので精一杯だったから忘れていた」
『…ははっ、お前って本当に馬鹿だな』
「ば、馬鹿とは何だ!馬鹿とは」
今も昔も、一つの事に集中すると周りが見えなくなるところ、そして自分が間違ってる思ったら、とことんと直そうとするところ。お前がそんなんで居てくれるから、俺は救われる。何というか、気持ちの面で。
『わりいわりい…それより、ありがとうな司』
「何がだ?」
『俺が監督に刃向かった時、止めてくれて』
「別に構わないぞ。何故なら、我らは兄弟ではないか」
『…そうだな!』
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