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俺は幼い頃から、ずっとサッカーが好きだった。夢中でボールを追い掛けて、蹴って、止めて。ただ単純な事をやっているだけなのに、時間は全く感じなかった。
でも、小学校高学年になったある日。俺の運命を変えることが起こった。
いつものように、幼なじみである司と公園でサッカーをしていたら、スーツを着た男が俺たちに話し掛けて来た。その人は"黒木"だと名乗って、俺達に"強くなりたくないか?"と問い掛けてきた。確かに、その時の俺はまだ考えが未熟だったから、"サッカーが強い=サッカーが楽しい"と思っていた。
だから、素直に"はい"と答えると、その人の後ろから父さん、母さんが現れた。もちろん、司の方も。そして二人は俺を抱き締めて"ごめんね"と何度も言ってくる。でも俺には、何でそんな事を言うのか、何で泣いているのか、その時はまだ分からなかった。
しばらくして、黒木さんが二人から俺を離し、司と俺の手を引いて車に向かった。母さんは泣き崩れ、父さんが支える。俺はひたすら、2人の事を車に乗るまで、見つめ続けた。
「近藤名前…」
『……』
「…起きんか!!近藤名前!!」
『は、はい!!』
「廊下に、立っとれ!!」
クラス中に担任の声が響き渡ったと同時に、授業の終了を告げるチャイムが鳴り響いた。俺はそれによって顔をニヤリとさせると、担任はさぞかし悔しそうな顔をした。まぁ、俺が授業を寝ていたのがいけないんだけどさ…。
まさか、あの夢を見るなんて思ってもなかった。あの後、俺は司と共にシード育成施設に連れて行かれて、厳しい訓練を受けた。そして俺はそこで、フィフスセクターの下部のなるシードになり、化身を使えるようになって今に至る。
『(だけど、今となっては、全て無意味だけど…)』
俺は鞄に机の中にある教科書を適当に突っ込み、教室を出る。何人かに"バイバーイ"と言われたが、顔を合わせず手だけ振って、速攻部活に行った。
→next be continu
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