月山長編 | ナノ


▼ 09

近藤名前という名前は聞いたことがあった。確か試合でGKと接触して大怪我をした選手だった気がする。だけど顔が全く思い出せず、名前を聞くまで彼奴が近藤名前だとは分からなかった。

だから背番号をかけて勝負を挑まれた時、俺が余裕で勝つと思っていた……なのに、なのに。彼奴は化身を発動し、あっという間に俺から二点をとった。そして化身技によって三点目を決められると思った時、戻って来た監督によって勝負は終了。そして、俺は平手打ちと背番号10をもらった。

あんなにこだわっていた背番号なのに、正直に言って嬉しくとも何ともない。油断していたから……いや、そうで無くとも彼奴と俺の力の差は歴然だった。だって、化身技を出さると分かった時、"こいつには勝てない"そう思った。そんな相手から背番号をもらったって……。

「浮かない顔をしているな。南沢よ」

「兵頭……」

「背番号、嬉しくないのか?折角似合っておるのに」

「……別に、嬉しくねえよ」

「お前と名前は良く似ている」

兵頭の言葉に思わず耳を疑った。まさか、あんな短期でプライドを守る為に自分の体を壊す奴と一緒だなんて、思ってもないからだ。

「どんなところだよ」

「そうだな……高い目標をかがげ、それに打ち込むストイックなところ。又、素直じゃ無いところだな」

「お前は、俺を怒らせたいのか?」

「早く仲間だと思って欲しい、そう思ってるだけだ」

兵頭がシードだと聞いた時、冷たい奴なんだろうと思っていた。雷門に来た彼奴がそうだったからな。だけど、こいつは違った。仲間思いで、人情が熱い。そして、確かな心の強さを持っている。

松風も確かな心の強さを持っている。しかも、それが正しいって事が嫌なほどに。だから、俺は嫌なんだ。俺がやってきた事が否定されたみたいでな。彼奴の場合は、おかしい事をしっかりとおかしいと言える。

だけど、それじゃあ駄目なんだ。フィフスセクターの管理下の元では特に。でも、兵頭は恐らく……限られた制限の中で自分を出している。その厳しい環境に耐え抜く事、それが兵頭の強さなんだろう。キャプテンの傾向はチームに現れる事は多い。だから、彼の人はここがあってると言ったのか。

「雷門を絶対にぶっ潰すぞ」

「…!ああ、無論だ!」

「良い顔だぜ、兵頭」

「我は、名前を必ず本戦決勝に連れて行かなければならないのだ。この途中でキャプテンマークを引き継いだのならばな」

そうか……名前はキャプテンだったのか。それで、あの事故……納得がいくわ。


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