月山長編 | ナノ


▼ 08

『うわ……お前かよ』

「……っ!起きたのか名前!!」

『近えよ、このゴリラ』

「我はゴリラではない!!」

それにしても……ここはどこだ。分かる事と言えば、四面はカーテンに囲まれ俺は白いベットの上。そして、ゴリ……司が目の前に居るだけ。くっそ……起きたばっかりなせいか頭が回んねえ。ぼーっとした状態が続いて、今まで何をしていたか上手く思い出せない。

確か俺は……南沢と。

『そうだ……南沢だ!司、南沢を呼んでこい!!あいつとはまだ決着がついてない!!』

「……名前、すまない。それは出来ん」

『何でだよ』

「……」

『何か言えよ……司!!』

「……後悔はしないか?」

司の問いかけに一瞬迷いが出た。こいつがここ言うのは、並大抵の事では無い時。だけど俺は「頼む」とそう司に告げる。ここで誤魔化されるより、真実を知ってしまった方が良い。

司の話によると叔父さんの言葉の直後、俺は化身技の最中でありながら意識を落とした。叔父さんは直ぐに救急車を手配し、俺は病院で治療を受け今に至る。医者の話では、あと少し身体に負担をかけていたら、大手術になるところだったらしい。つまり、俺の命は叔父さんに救われたんだ。でも、救われたと言っても身体には壮大なダメージがあり、また暫く病院暮らしをするはめに。つまり、サッカーが出来るのが、更に先になってしまった。

一方、部員の皆は一人づつ叔父さんから平手打ちをくらった。誰一人として俺と南沢を止める事が出来なかったからだ。勿論、南沢にも平手打ちをしたらしい。

そして、叔父さんは南沢を正式に10番にする事を決めた。でも、それなのに南沢は喜んでいなかったらしい。


「……以上だ」

『……ありがとな、司』

「我はただ当たり前の事をしたまで。礼を言われるまでもない。それより、名前」

『なんだよ』

「辛かったら泣いても良いのだぞ」

司のこの言葉で、張り詰めていた糸がプツンと切れた。そして、次々に涙が流れてきたんだ。俺はあの時以来に大泣きした。もう、二度とサッカーが出来ないだろうと言われた、あの日のように。司はそんな俺を、ただ無言で抱きしめてくれた。


「すまないな、兵頭。名前はどうだった?」

「やはり、あの時のように泣いていました」

「そうか……本当なら私が名前に言うべきだが、それでは名前が素直に感情を表さず溜め込んでしまう。ましてや、喧嘩になってしまう。それだけは避けたかった。私は名前や、お前に悪いことしてばっかりだな」

「それが仕方が無いことは、我も名前も分かっていますよ監督」


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