▼ 05
叔父さんからは、時間と場所しか伝えられていなかったから、どんな奴が来るかは全く分からなかった。南沢は思ったより身長が低く、顔は整っていた。その顔からは、自分の意志をしっかり持っているのだと感じられる。やっぱり、伊達に雷門に居たわけじゃないんだな。
「それで、お前の名前は?」
『近藤、名前』
「へぇ……お前が」
『何だよ』
「別に?それじゃあ、宜しく。近藤名前」
『……宜しく』
南沢が何故、あそこで間をあけたのか俺には分からなかった。俺は今この体のせいで大した結果は残していないし、あの事件の前もこれと言っては……。それか、武田さんから聞いていたのかもしれない。
あの人は今はフィフスセクターの幹部だけど、元はシードの教官だった。俺は一時だけ教えてもらっていただけど、とにかく情報能力が凄かった。どのシードにはどんな練習が必要なのかというデータは勿論、選手一人一人の健康状態その他諸々……。武田さんの指導を受け、能力が上がらなかった奴なんていなかった。どうやら、フィフスセクターにもこの能力があったからスカウトされたらしいし。「どうした、名前?」
『いや、別に……』
「そうか?……それじゃあ、二人とも行こうか」
武田さんの後を追って、駅を出ていく。駅から月山まではかなり距離があるから、流石に歩いて行くのは厳しいので、バスに乗るのが普通だ。だが、そのバスも本数が少ないのが現状。何故なら……。
「しっかし、田舎だなここ。山しかねえじゃん」
「まあ、そう言うな南沢。自然は良いぞ、そうだよな名前」
『は、はい』
南沢が言った通り、ここは田舎の中の田舎。コンビニなんてあるわけ無く、あっても駄菓子屋くらい。だから、フィフスセクター本部に収集がかかった時は、帰りたくないなって思ったりもする。だって向こうはコンビニとか、ゲーセンとか充実してるし。それに電車やバスがたくさん運行してるし。正直言って、向こうのシードが羨ましい。
まあ、今回乗るバスはもう10分すれば来るから良いけど。(下手したら、40分弱待つ時とかもあるし。)その間に、叔父さんに連絡しておくか。鞄に入ってる携帯を取り出し、叔父さんに電話をかけた。
『もしもし、叔父さん。今、バス停で待ってるところだから……』
「武田さん」
「何だ?」
「何で彼奴、叔父さんなんかに電話してんだよ」
「月山の監督は、名前の叔父さんなんだ」
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