月山長編 | ナノ


▼ 04

転入生を迎えに行く為、俺は月山の最寄り駅でそいつが乗ってくる電車を待っていた。時間は予定ではもう来るはずだ。

しばらく待っていると、ホームでカンカンという音が鳴り響く。俺はベンチで踏ん反り返っていた体勢から、前傾姿勢になった。そして、頬を一回叩いて気合いを入れた。

電車は止まり、扉は開いた。しかし一斉に電車から人は出てくる事はなく、どこに居るんだろうと思ったら、先頭車両の人影が二つ見えた。大人と子供、しかも改札口とは逆の場所にいる俺の方へ向かってくるんだから、直ぐに俺が待っている人物だと分かった。

多分、黒木さんだろう。"あの人が大体、人事とか仕切ってるし。"なんて考えは呆気なく崩れ去った。何故なら…

「相変わらず、正気がないような顔をしているな名前」

『別に……って嘘、まじかよ』

雷門の奴を連れてきたのは紛れもなく、シード育成所時代の教官である武田那緒さんだった。でも何で、武田さんが。確かこのひとは本部に戻った後に、本職であったフィフスセクターの幹部業務をしていた筈なのに。

「まだ、信じられないって顔をしているな」
『それはそうだろ!!てっきり黒木……さんが来るって』

「思っていたんだな。まぁ、本来ならそうだ。だが、この彼は私から勧誘したのだから、最後まで見るのが当たり前だろう。それに、黒木さんも忙しくてな」

『ふーん』

武田さんの言い分を考えたら、何もおかしくない。けど、幹部の人が中学に出向いて勧誘しに行くか?普通……そう考えるとコイツはそこまでフィフスセクターから必要とされた人材なんだろうな。もうそれしか思い当たらない。

「名前、そろそろ月山に行きたいんだが……自己整理は出来たか?」

『ま、まぁ……だけど、その前にコイツを紹介して欲しいんですけど』

「近藤監督から聞いていなかったのか……分かった。彼は」

「南沢篤、ポジションはFW。これでいいだろ」


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