八神
 

「名前」

『…八神さぁんだ!!』

「名前、何だその酔いようは。いったい何杯飲んだんだ」

『そんなの、わすれまひたぁよ。えへへ』

「はぁ…」


仕事が終わり、自宅へ帰ろうとしていたら一本の電話が携帯にかかってきた。嫌な予感しかせず、一回は無視をしたのだが…私の携帯は再び部屋の中で鳴り響き出ることにした。

電話の相手は居酒屋の店主。やはり予感は的中。どうやら名前が店で酔いつぶれたようで、発信履歴が最初だったため、私に電話をしたらしい。だから私は「もし酒を飲むなら、飲みすぎには気をつけろ」と私より早く帰宅する名前言っておいたのに何故だ、と怒りを覚えながら居酒屋へと向かった。

そして、今に至る。


「会計は私が済ませておいた。だから帰るぞ」

『いや、れす…私、もっと のむ。あっ、八神さぁんも、いっしょに 飲みましょうよ』

「私が飲んだら、車で来た意味がなくなるだろう」

『他のひとに、頼めば良いじゃないですか』


腕を捕まれ、無理やり椅子へと座られそうになった私だが、なんとか持ちこたえて、その後 彼女を担いだ。『うわぁ、おんぶだぁ』などと言って喜んでいるが、大人にもなってよく飽きな。それに、おんぶなんて彼女が酔いつぶれ、私が家へ送っていく度にしているのに…。

会計は、彼女に会う前に済ませておいていたので、居酒屋にはそのまま出て行った。それにしても…よくこんな細い体であんな量の酒が飲めるな。ウィスキーに日本酒、芋焼酎・ビール。勘定とレシートを見た時は驚愕した。そのせいで、私の財布の方も薄くなったのは言うまでもない。

コインパーキングまでは少々遠く、電灯で照らされた道を歩く。ふと、上を見ると夜空一面が星で敷き詰められていて、毎度綺麗だと思う。まさか、ここでもこんなに見れるとは名前に知り合わなかったら、分からなかっただろう。


『八神さぁん』

「ん?どうしたんだ」

『好き…です。だぁい好きです』

「…っ」

『嘘だと思ってるでしょ、本当ですよぉ!!本当なんだぁから…』


名前は強く腕を首に絡めてきた。だが、手はうっすらと震えていて彼女の気持ちが直に感じてくる。名前は、私が独身だとはいえ妻や子がいたため、想いを伝えるのさえ怖かったのだろう。だが私は…。




"君のことを愛している"
(伝わるはずなんて無いと思っているが)



next…?















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