真田
 

また弦一郎が保健室に運ばれたらしい。今月に入ってからもう三度目だ。幾ら何でも回数が多すぎるでしょ。
別に帰宅部の私には関係ない事だけど、幼馴染からしては心配になる。幸村と試合したせいで保健室行きになるなら、いっそのことしなきゃ良いのに。
でも真向勝負をしたがる弦一郎にこんな事を言ったって無理な話。女の私にだって剣道で容赦なく打ってくるんだから。それに鉄拳を入れられたら困るし。

「失礼します。弦一郎を迎えに来ました」

私は毎回こうして弦一郎を保健室まで迎えに行く。本当なら親御さんが迎えに来るはずなんだろうけど、弦一郎の親だ。一人で帰れると言って来ないらしい。しかし学校側もそうにもいかず、隣に住んでいる私を駆り出す。帰宅部なんだから暇だろって。断ろうにも断れず、三年間が経ち今に至る。

「毎度毎度すまない、名前」
「別に良いし。ってか、謝れる元気があるなら、さっさと帰るよ」
「うむ……分かった」
「じゃあ先生、弦一郎を連れて帰りますね」

***

「はぁ?何、今回はそんなくだらない理由で保健室に運ばれたの」
「……」
「ほんと飽きれた。心配して損した」

どうやら弦一郎は、幸村とテニスをして保健室に行った訳ではなくて、単なる脱水症状で運ばれたらしい。話を詳しく聞いてみると、ランニングの時に一切水をとらないで、しかもメニューの量以上の回数をこなしたらしい。そんなことをしたら誰だって脱水症状になるってことが分かるのに、これだから鍛錬馬鹿は。どんだけ幸村や手塚に勝ちたいんだろう。

「すまん……」
「謝るなら、それに見合った成果を出してよね。弦一郎のカッコいい姿をさ」
「っ!……ああ、もちろんだ」

私にはテニスの良さなんて全く分からない。だから、本当はこんな面倒くさいことは長い下げ。でも、弦一郎のこの笑顔があるから、つい手伝っちゃうんだよね。


―素直になってみた。
(こんなの弦一郎にだけだから)


Fin.




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