土門2
 

大晦日なのにも関わらず、名前は書斎でパソコンと睨めっこしながら仕事の真っ最中。今日ぐらい仕事の事なんて忘れちゃえば良いのに(本当は毎日って言いたいけど、仕事が好きな彼女にはね…)。
キッチンのコンロには(名前ほど旨くはない)俺が作った汁とまだ茹でてないそばが、早く一緒になって食べられないかと待っている状態。作った身からしても早く食べてもらいたいけど、ここで書斎に入るタイミングを間違えれば確実に殺られる。ここはサッカーと同じで、うまい駆け引きが必要なんだよな……と思いつつ、俺は一人テレビの特番を眺めた。
まぁ、去年なら待たなければならない人は居なかったんだし、それなりの進歩だろう。しかも、自分の最愛の人。これが男友達だったら、去年と殆ど変わりはしないんだ。だから俺は勝ち組だ。
そう考えると、何故か勇気が湧いてきた。よし、このまま書斎に入って名前を呼びに行こう。俺は炬燵から出て、書斎へと向かった。
俺は書斎の前に立ち、そしてドアをノックして開けようとした。なのに次にはドアなんて無くて、あるのは名前の胸。あ、因みに見た目より柔らかい気がする。

「飛、鳥……?」
「わ、わりぃ!!」

俺はすぐさま名前から離れた。それにしても、彼女の胸に助けられるとか……どんだけ俺はラッキースケベ何だよ。まあ、この後何かしらの仕打ちがありそうだけど。

「あ、あのさ名前」
「ちょうど飛鳥もドアを開けようとしたら、私とタイミングが合ってしまった。なのでドアという支えがなくなった飛鳥は、新しい支えと私に体を預けた。違うか?」
「その通りです……」

名前は非常に頭がいい。だから今起こった事もすぐに理解した。サッカーでも司令塔としては、鬼道といい勝負だし分野によっては名前が勝つ部分もある。

「それで、用は何だ?だからここに来たんだろ」
「うん。そろそろ仕事が終わったんじゃないかな……って思って。名前は?」
「もう仕事は終わったから、出て来たたんだ」
「そう。だったら」

俺は名前を引き寄せ、抱きかかえた。所謂お姫様抱っこだ。何でこんな事をしたか?決まってるだろ、名前に一本取られたからだよ。いろいろな意味でさ。

「なにしてるんだ」
「まあ良いから…」

俺はそのまま名前を連れてリビングへ直行。着いたら、名前を炬燵の近くに降ろして入るように促した。その間、自分はキッチンへ。途中名前に「手伝おうか?」と聞かれたけど、ここは断っておいた。流石についさっきまで仕事をしていた人に、手伝ってもらうのは流石に気が引けるし。
汁を温め、沸騰したところに蕎麦を投入。暫く待てば年越し蕎麦の完成だ。具は鳥肉が少量しか入っていない、所謂シンプル イズ ザ ベストだ。まぁネギは入れっけど。俺は器に蕎麦を入れ、それをお盆に乗っけて名前の方へ向かった。

「お待たせー」
「ありがとう。あ、美味しそうだ」
「そうか?でも、あんまり自信ねえよ」
「まぁ、食べてみないと分からないだろ」
「それもそうだな」

手をゆっくり合わせ、一言"いただきます"と二人で揃えて言った。名前が最初に一口蕎麦を食べ、その後に汁を飲む。そして俺の方を見て親指を立てた。どうやら、気に入ったらしい。本当、作って良かったわ。





fin.



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