白竜
 






俺はフィフスセクターが出来た当初から、とあるシード育成所の教官を勤めていた。
そこで出会ったのは、"白竜"という子だ。
彼はとてもサッカーが好きで、こちらが色んなことを教えるとすぐに飲み込んでいった。
だから必殺技を覚えるのは早かったし、化身を出すのも。
そんな彼と俺は次第に師弟関係になっていたったのだが……
白竜はゴッドエデンへ、俺は本部に行くことが命ずられる。
このことが伝わった時は泣かなかったものの、別れの日になって白竜は俺に「名前さん、行かないで下さい」と泣きながら言ってきた。
だが命令を断ったとしたら、俺達は二人とも処罰を食らう。
だから俺は白竜にこう言った。


『強くなれ、白竜』











俺は名前さんと別れたあと、がむしゃらに練習に打ち込んだ。
どんなに教官が厳しくても、どんなに環境が悪くても、どんなに体調が優れなくとも。
だけど、一向に名前さんとは会えることが出来なかった。
一時は諦めかけたこともあったが、俺は練習を続け、とある一つの考えに陥る。
それは、この俺が"究極"になること。
それを成し遂げれば、名前さんと会えるのだ。
だが、現実はそう甘く無かった。
剣城と言って、俺の練習を楽々付いて来れる奴を見附だが、そいつは直ぐに雷門中へ配属。
その後、剣城はシードを辞め、反逆者としてゴッドエデンへ戻ってきた。
最初の試合で俺はこてんぱんに倒し、究極に一歩近づけたと思ったが、二回目の試合ではエンシャント・ダークと手を組み、究極になったはずなのに負けた。
つまり、俺は究極になれなかったんだ。
だから俺は名前さんとはもう、一生会えない。
泣きたかった。
だが涙が全く流れるどころか、溢れもしないのだ。
試合後の夜、何故か俺は再びグラウンドに来ていた。
自分でも分からない。
ただ体が勝手に動いていた。
そこではボールが"ポンポン"と跳ねる音が聞こえる。
最初は誰がリフティングをしているのか暗く、良く分からなかったが、時間が経っていくうちに誰だか分かった。
それは紛れもなく…。

「名前…さん。名前さん!!」


俺がずっと会いたかった、名前さんだった。


『白竜、何でこんな時間にここに』

「気づいたらです。それよに名前さんこそ」

『ゼロが負けた事によって、ゴッドエデンが不要になった。だから、ここの訓練施設の代わりに新しいものを建設することになっている。そのため、ここの後処理をしないといけないから俺は来たんだ』

「それだけ……」

『何か不満か?』

「いえ、何も。それとすみません」


はっきり言って悲しかった。
てっきり、また名前さんと居られると思ったから。
だが会えただけで十分ありがたいことだ。
もう会えないと思ってたから。
なのに、なのに、凄いつらい。


『そんなに暗くなるな、白竜』

「すみ……ません」

『嘘なんだから』

「……え!?それって?」

『本当はここの後処理の担任は俺の上司だったけど、無理やり変えてもらったんだ。白竜と一緒にまた居たかったから』

「っ、名前さん!?」


名前さんは俺を急に抱き締めてきた。
突然の事に吃驚したが、次第に嬉しさが増してくる。
そして気づいたら、涙が頬を流れていた。


『遅くなって、ごめんな』

「別に……大丈夫です」

『悲しい思いをさせてごめん』

「はい……」

『だけど、もうお前の事を離さない。絶対に』

「お願い……します」









―祝福の光。
(俺にとって、これが究極だ)






fin.






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