緑間
『緑間くん居ますか…?』
男子バスケ部の部室に行きドアを叩く。だけど、中からは緑間くんの声すら、人が居る気配すらなかった。
高尾くんが、居るって言ったから来たのに…。やっぱり、からかわれたのかな、私。それもそうだよね、男子バスケ部と全く関係ない女子が来たって困るだけだし。
「俺に、何か用か?名前」
『み、緑間くん!!?』
緑間くんは何故か部屋の中からではなくて、後ろから現れた。突然のことに驚いてしまった私は、手に持っていた紙袋を…
ぐしゃり
落っことしてしまった。
「す、すまない…。別に俺は驚かせるつもりは全くなくて」
『ううん、別に大丈夫だよ。そもそも私がいけないんだし』
と言っても…大分私のなかでショックを受けてる。因みに、紙袋の中身は今日の為に作った誕生日ケーキ。勿論、緑間くんに作ったものだった。
何度も練習して、朝早く起きて頑張って作ったから尚更。はぁ…本当に私ってついてない。
そう思っているうちに、私の目は霞んでいき、涙が出てきた。
「な、泣くのではないのだよ」
『だ、って…』
「…じゃあ、俺が弁償する。それでいいだろ」
『え、ええ!?』
「何か不服か?」
『い、いや…』
緑間くんにキッと睨まれて、言葉を失ってしまった。私がシュンっとなっている間に、緑間くんは紙袋を開けてしまい…驚いた顔でこちらを向いてくる。
そんなにジロジロ見ないで欲しい。恥ずかしくなった私は、この場から離れようとした。結果的にプレゼントも渡せたわけだし。なのに…緑間くんは私の腕を掴んできた。
「…自分で作ったのだから、切り分けたりするのは普通ではないのか?」
『食べてくれるの…?』
「もらったら普通、食べるに決まっているのだよ」
『ありがとうっ…緑間くん』
「…ふん」
―素直じゃない彦星と、泣き虫な織り姫。
(あの後、部室で崩れてしまったケーキを囲んでケーキをたべた。来年はちゃんとあげれるといいな)
FIN.
前へ 次へ