七松
 

最近、七松先輩の様子がおかしい。バレーの時もスパイクを決められなかったり、「いけいけどんどん!!」と言う回数も減っている。委員会の後輩としたら心配だ…。だけど、一人では何も対策が思いつかなかった私は、七松先輩の同室である中在家先輩に聞く為に図書室へと向かった。

「中在家先輩、少し宜しいでしょうか?」
「…」
「え?」
「中在家先輩は、"構わない"って仰っているよ」
「不破先輩!」

不破先輩がいらっしゃって本当に良かった。でないと会話が続かなかったと思う。
中在家先輩が仰る事は、四年生である私にも分からない。しかも私は体育委員であるから、図書委員である中在家先輩とお話することも少ないからな。ここは不破先輩に通訳をお願いするとしよう。

「ありがとうございます…本題なのですが、最近の七松先輩は以前と違っているように思えませんか?」
「…」
「"確かに"」
「そこで私は…七松先輩に身近な事で変わったことあると思うんです。何か心中りがあったりしますか?」
「……ある」

やっぱりあるのか。ここは是非聞きたい…だが四年生である私が聞いては不味い事かも知れない。忍術学園の機密情報とかで。しかし私は七松先輩に元に戻って欲しい!!振舞わされるのは勘弁したいが、調子が狂うからな。だから私は失礼かも知れないが聞くことにする。

「中在家先輩…それはどういう事でしょうか?」
「…………」
「ええ!?それ本当ですか!!あの暴君と言われる七松先輩が…」
「…ああ」

どうやら凄い事らしい…。まだ、ちゃんと不破先輩から通訳して頂いてから聞いていないから分からないけど。不破先輩の反応を見る限りだと。

「滝夜叉丸…落ち着いて聞いてね」
「はい…」
「…七松先輩に好きな相手が出来たらしい」
「え…」
「……」
「毎晩の寝言で、くノ一教室であるその子の名前を言っていたり」
「……」
「六年の立花先輩に相談もしているらしい」
「…そう、ですか」

まさか、七松先輩の不調の理由が"恋わずらい"だとは思っても見なかった。それより、あの人もちゃんとした人間なんだな…。

「…」
「"それで、平はどうするつもりだ"」
「もうこれは本人の問題なので関わらない事にしようと思います。色々とありがとう御座いました。中在家先輩、不破先輩」
「…別に…礼を言わなくても…いい」
「そうだよ滝夜叉丸」
「後輩なので当たり前です。では私はここで」

私は立ち上がり、図書室から出る前に先輩たちに一礼してから襖を閉めた。七松先輩の恋、叶うと良いなと思いながら。

「……小平太」
「やはり居るのが分かっていたのか長次」
「あたり……まえだ」
「先輩、僕は席を外しますね」
「すまないな!不破」
「いえ、大丈夫です」

今度、不破にはバレーかマラソンを誘ってやる事にしよう。きっと喜ぶぞ!!それには頑張って鍛錬しないとな。

「……」
「ああ、そうするつもりだ!!当たって砕けろだ!!」
「……頑張れ」
「ありがとう長次!!私、頑張るからな!!」

私は一瞬にして天井に行き、名前が居るであろう場所へ向かった。今の時間からすると、くノ一教室前の庭だな。その前に裏山で花を積んでからにしよう。名前は花が好きだ。

****

「名前!!」
『小平太くん?うわっ、な何!!』

つい勢いが余って抱きついてしまった。いや、抱きかかえてしまった。私はゆっくりと名前の事を降ろしてやった。

「すまんな!!名前」
『別に大丈夫だよ!』
「そうか…あ、コレやる!!」

私はさっき裏山から摘んで来た花を名前に突き出す。すると名前はパァっと笑顔になった。仙蔵の言っていた通り、女子に花を渡すと喜ぶんだな。

『ありがとう小平太くん!!でも何で』
「そのな…すきだ」
『え?』
「…名前は花が好きだと言っていただろう!!だからだ!!ははっ」
『嬉しい…嬉しいよ小平太くん』
「名前…」

告白はまた今度にするか…。今はこの時間を大切にしたいからな!!




―臆病者な暴君の恋。
(次こそは…!)




fin.


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誕生日の こよち様に捧げます。
















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