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「例えば……先輩を笠松先輩好みの女性にするとか?」
「……どうやって」
「そりゃあまぁ、スタイリストさん達の力を借りて」
「職権乱用じゃん」
「使えるもんは使う質なもんで!」
ちょっとでもコイツに聞き耳をもった私が馬鹿だった。こんなゲス野郎の考える事なんて丸分かりなくせに。
私は立ち上がって、その場を去ろうとした。なのに黄瀬は私の手首を掴んで、離そうとはしない。更に黄瀬は私の事を、まるで段ボールに入った捨て犬の眼差しで私を見つめてくる。モデルで顔が整っている奴にこんな事をされたら、断る事なんて出来ないでしょ。
私はしょうがなく、ここに立ち止まることにした。だけど、こいつの意見に賛同したわけでは無い。
「ねえ、何でアンタはこんな私にそこまでしようとするの?」
「それは……」
「からかい?それとも、面白半分?」
「違うッス!」
「じゃあ何?」
何で私がここまで黄瀬を問い詰めてるのか、私自身も分からなかった。それなのに黄瀬を責めてしまってる自分が嫌になる。こんな醜い奴が綺麗になったって、実る物も実らない筈だ。
「名前先輩、泣かないでください」
「泣いて……ない」
「鼻まで垂らしても、強情っぱりなんスか?」
「……」
「これ使ってください」
「……ありがと」
黄瀬からはタオルを受け取った。でも、なんか悔しかったから思いっきり鼻をかんでやった。それに対して黄瀬はひくところなんて見せない。くそ……ほんと、非の打ちどころがないよな黄瀬は。普通の女子だったら、こんな事をされたらノックアウトだよ。
「名前先輩。俺ね、振られちゃったんすよ」
「……あんたが?」
「はい。しかも告白が出来なかったんス……だから、名前先輩には俺と同じ思いをして欲しくなくて」
「黄瀬…」
黄瀬が振られるなんて……なんか意外だ。しかも告白せずに玉砕なんて。黄瀬なら奪い取ってやる感じなのに。
ってか、それだけでスタイリストさんとか使っていいのか?私だけって感じがするし、私も何かした方が良いんじゃ……。そうだ、良いこと考えた!
「だから俺、名前先輩をプロデュースするッス」
「ありがとう。でもね黄瀬、あんただけにやってもらうのは申し訳ないから、私も何かやろうと思って」
「え、別に良いんスよ!!俺が勝手に決めたことだから」
「もう決めたの。私、黄瀬の新しい恋を見つけてあげる」
「え、ええー!」
こうして黄瀬と私の計画が始まった。
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