目を開けると、周りに白衣を着た大人達がたくさん居て、皆忙しそうに部屋内を駆け回っていた。
何かあったんじゃないかと思い、大人達に聞いてみようにも声が出ない。どうやら口に何か付けられているみたいだ。そして、体にはたくさんの管が刺さっている。
そうだ…俺、被験体だったんだっけ。だから水みたいな水溶液の中に入れられていて、大人達がそれについて調べているんだ。
「…名前」
あれ…誰かに名前を呼ばれた気がする。しかも聞き覚えのある声だ。でも、声の主は目の前にいない…じゃあ、どこで。
「名前…名前!!」
また名前を呼ばれた。だけど、一向に声の人物は現れなくて困り果てていると、何故か急に頬に鋭い痛みが伝わってきた。
『…いったぁ!!』
「だから言っただろ、いくら何でもビンタはないと」
「私が呼んでも起きようとしない名前が悪いんだ」
「しかしなぁ…大丈夫か?名前」
『う、うん』
目の前には、心配そうな顔をした治と、そっぽを向いた玲名が居る。何で二人が…もしかして、と思い腕を見てみると管は一つも付いていない。
じゃあ、あれは夢だったのか。よくよく考えると、あれはエイリア石の研究中の時の光景だった。折角、忘れようとしていたの…やっぱり忘れさせてくれないんだね。
…それより
『治、どうして俺はここにいるの?』
「覚えてないのか…それも無理はない。何故なら名前は倒れたんだ。過労でな」
『過労?…俺、あまり働いたつもりはないけど』
「働き過ぎだろ、主にヒロト達のせいで」
あー…そういえば。今日は、よく皆と関わっていたような。朝は喧嘩の仲裁に入り、瞳子姉さんには事情及びあまり怒らないで欲しいと懇談して、罰として買い物に行った後はリュウジからの相談…か。
『だけどさ…玲名、幾ら何でもビンタする必要はなくない?』
「……心配だったんだ」
『心配?』
「エイリア石の実験の影響でだ」
『…ありがとう。だけど、病院で調べてもらって問題無いって言われたから、大丈夫だよ俺は』「だからと言って、無理に起こす必要はないだろ。悪化したらどうする」
「マスターランクだった名前は、ファーストランクのお前と違って伊達な鍛え方はしていないから大丈夫だ」
「何?ファーストランクだからといって、今は関係ないだろう」
『まあまあ、二人とも落ち着いて』
ー愛しい家族。
(俺、こんなに愛されていたんだな)
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