Medium story | ナノ

隠れた瞳は空の色 ‐第二話-




 それから急激に仲良くなった二人と僕は三人で過ごすことが増えていた。凛は女子の友達も出来たみたいだけど、それよりも僕達と過ごすほうが気が楽なのか休み時間の度に僕の席へとやって来た。

「凛さ、なんで青道に転入したの? 戻ってくるなら神奈川じゃない?」
「んー、それはそうなんだけど……。言わなきゃ――ダメ?」
「言い難いならいいよ。凛に会えたのは事実だし」
「ありがと、春ちゃん」

 本当は訊きたかった。もしかして兄貴を追って来たのだとしたら。とか考えてしまうから。僕にとっては最大の目標で最強のライバルの兄貴を好きなんて言われたら、僕はかなわないと思うから。

「春ちゃんは? ……あの後彼女とか出来たりしたの? もしかして今もいたりする?」
「そんなの出来るわけないよ。あの後僕は前よりも更に野球漬けで、ここにだって甲子園を目指して来たんだから」
「そっか……」

 彼女が何を思ってそんな質問を投げたのかは定かじゃないけど、僕にはずっと凛だけなんだから他に彼女が出来るとか有り得ないのに。心の中で思っても、口に出さなかったらなかったことと同じだし、凛がわかってないのも無理ない。

「そう言えば降谷君ってピッチャーなんだよね? 女の子がすごい噂してたよ。剛速球投げるんだ! って。一度試合観にいきたいな。亮介君も春ちゃんも出るんでしょう?」
「兄貴はレギュラーだけど、僕はまだ確定じゃなくて……」
「春ちゃんなら大丈夫だよ! って無責任なこと言えないけど……でも春ちゃんならきっと」

 両手でガッツポーズで僕よりも気持ちのこもったエールを受けて、僕はこれまで以上に頑張ろうと気合いを入れた。

「ありがとう。凛にそう言われると頑張れるよ! 今度試合観に来てよ。Cクラスに面白い投手がいるんだ」
「投手ってことは、降谷君とライバルだね」
「ほんとにあの二人はいいライバルだよ。お互い競い合って目を見張るほどの成長してるんだから」
「春ちゃんがそう言う程なんて、どんな人かすごい気になっちゃう」

 休み時間が終わるまで世間話で盛り上がって、チャイムが鳴ると凛は自身の席へと戻って行った。彼女の席は降谷君の前の席で、授業が始まったというのに座ったまま寝ている彼を起こしていた。前の席だから彼に世話を焼くんだろうけど、正直好きな子が他の男子の世話を焼いているのを見るのは嬉しくない。ま、でも降谷君だから安心できるのも事実だけど。

 けどそんな安心も彼の一言で崩壊してしまう。
 それは部活が終わって夕食を食べていた時のこと、降谷君がいつにも増してぼんやりしていたから心配になった僕は「どうしたの?」と問いかけた。すると彼は「最近凛を見ると胸のあたりがおかしいんだ」と自分の胸を押さえながら言った。

「それって……」
「何かの病気かな……? 病院行かなきゃダメかな?」

 降谷君、それって凛に恋してるんじゃ……。
 そう思ったけど本人が気がついてないのに僕が言うのもおかしいかなって黙ってた。言ってしまったら降谷君は僕の恋敵になってしまうし、今の三人の関係が崩れてしまうのはもっと嫌だった。僕は凛が好きだけど、降谷君のことも一緒にいて気を遣わなくて良い関係だと思っているから。


to be continued……





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