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俺に会いたい?◇
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また、見つけた。

図書室で、おそらく純文学に分類されるであろう本を読んでいた。


20ページ目。

ちょうど今読んでいるところがどこか示す数字の横に書いてあった。


『にっこり笑って、こんな本読んで楽しいんか?』

小さい字。

すぐに消えてしまいそうな、細かい文字。


「儚い・・・。」

思わずそう言ってしまった。

「おや、名字さん、どうされたのですか?」

「あ、柳生くん。なんでもないよ、うん。」

自分に言い聞かせるように同じく純文学を読んでいた柳生くんに笑いかける。

彼は風紀委員。

そして彼も本が大好き。

その大好きな本にこんな落書きみたいなことされてたらきっと悲しむ。

「だれが書いたんだろう・・・。」

私は貸し出しカードを見てみた。

「ええっと・・・。さな・・・真田弦一郎・・・。」

真田くんっていうと、あの風紀委員長の・・・?

あれ、委員長だったっけ?

ともかくあの人厳格なことで有名だし、こんなことしないか。

でも、一応柳生くんに聞いてみよう。

「柳生くん、ちょっといいかな。」

「はい。いいですよ。どうなさいました?」


彼はさっきまで座っていた席からわざわざ立ち上がり、私のほうまで歩いてきた。

「あ、くだらないことだから座ってていいのに。」
「いえいえ、いいんですよ。」

「ありがとう。この、真田くんってどんな人?」

そう言いながら貸し出しカードをゆびさす。

「ああ、真田くんは我々立海テニス部の副部長です。」

「副部長?」

「ええ、とても厳格で、曲がったことが嫌いな人です。」

「そうなんだ、机にらくがきとか・・・。」

私も5、60回は経験のある。

というか毎日のようにしているもはや日課を彼も行うのだろうか。

なんかイメージ違うよなぁ、と思いつつ柳生くんの返答を待つ。
   
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