happy sweet home | ナノ


06話目
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「ちぃーっす。」

「こんにちは。」

私たちは青学のテニス部部室を訪ねた。

「越前。どうした。」

「手塚部長、この人・・・。」

そう言ってリョーマは私を見た。

「あ、こんにちは。氷帝学園3年、テニス部マネージャーの歌原睦月といいます。本日は部長の使いできました。書類をどうぞ。」

「ありがとう。俺は青春学園テニス部部長、手塚国光だ。」

「よろしくお願い・・・あっ。」

本当に眼鏡で老け・・・大人っぽい。


「手塚、今度のオーダーが・・・なんじゃリョーマ。のこっておったんか。」

「あ、ばーさ・・・竜崎先生。」

ノックをして部室に入ってきたのは50代前半くらいの、テニス部の顧問らしき女の人。

「あの、こんにちは。」

「ああ、こんにちは。誰じゃ?」
「俺の知り合い。氷帝テニス部のマネ。」

「歌原睦月です。」

「ほう、氷帝の・・・ん?歌原っていうと・・・?」

私の名字を聞いたとき竜崎先生の顔が変わった。

「はい?どうかされましたか?」

「お前さん、親は・・・?」

「あ・・・父と母ですか?今は確かアメリカにいますよ?」

私の父と母は結構有名な企業で働いていて、外国に行くことも多い。

「そんなはずは・・・しかし・・・。」

「バーさん。もういいでしょ。俺達もう行くよ。
睦月サン、先行っててくんない?俺ちょっと忘れ物したから。
さっきの校門前で待ってて。」

「?うん。わかった・・・。待ってるね。」

そう言って私はテニス部部室を後にした。

ドアの閉まった部室の中での会話も知らずに。

〜リョーマside〜

「バーさん、さっきなんて言おうとした。」

俺は竜崎先生の言おうとしたことが分かった。

だからわざわざ会話を打ち切って睦月さんを外に出したんだ。

「あの子、歌原といったな?」

「そうっすよ。それが?」

「そうか、あの子が・・・。」

そう言ったきり、竜崎先生は黙った。


「何なんすか。」

「あの子の父親と母親は・・・?」


「・・・・・。」

俺は知っている。

睦月サンの父親と母親がどうなったか。

「あの子は・・・?」

「あの人の父親も母親も、もうこの世にはいないんです。」

「やはりそうか。」

痛ましい事故だった。

「お願いします。睦月サンには言わないでください。あの人は何にも知らされてない。まだ親が生きて、アメリカにいると思っている。」


「・・・。」

「あの人の遺産は莫大なものだ。本人も知らないうちに睦月さんはそれを受け継いで、仕送りという形で受け取っているって聞いた。
バーさん、お願いだ。何も知らなかったことにしてくれ。」


それだけ言って俺も睦月サンの後を追った。
 
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