01.焦がれる2/17
愛の視線というものは不思議と、人に見えない。
これほどまでに思っているのになぜ彼に見えないんだろう。
不思議で仕方がない。
「私の視線が見えないのなら、あんな男。自分でも知らないうちに焼け死んでしまえばいいのに。」
「一人ぼそぼそ誰のことを話しているのだ、名前」
後ろからの声に振り向かず答える。
「彼のことよ、柳。」
すると彼も
「そうか。」
と、答えた。
同じクラス、後ろの席。この柳蓮二という男は少し厄介だ。
「だからそんな焦げるくらい熱い視線で見ているのか。」
「そうよ。相変わらずね。」
この男、視線が見えるらしい。目は開いてないのに。
「名前は相変わらずあの男が好きなのか。」
「そうよ。悪い?」
「悪い。かわいそうに、あの男、服が焼け焦げているぞ。」
授業中だというのに柳がおかしいことを言うもんだから。
「ブハッ!」
吹き出してしまった。
それを担当教諭に偶然見られてしまい。
「なんだ名字、おもしろいことでもあったのか?」
「い・・・いえ。ちょっと・・・くっ・・・。」
「ほう、来週試験だというのに余裕だな。ならばこの問題を解いてみろ。」
「えっ!(や、柳め・・・・・!)」
ベタなオチがつく、というものだ。
当の本人はしれっと板書している、卑怯者め。
そもそも視線が見える事自体、卑怯だ。
まったく、理不尽な世の中。
そう思いながら柳に言わせれば
「視線が多すぎてそこに立ったら一秒で炭の塊になる」
であろう黒板に向かった。
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side柳
視線が見える、そんなわけがないだろう。
俺が見えるのは痛い現実だけ。
自分の好きな女が別の男に焦がれるほどの視線を送っている、という。
ところで、名前。
背中、こげているぞ。
01.焦がれる。
いちずに、激しく恋い慕う。切ないまでに思いを寄せる。
そうなりたいと強く望む。
焼けて焦げる。
ほか多数の意味アリ。
2013/01/06
莉涙様リクエスト
「柳夢」でした。
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