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あまりにも鮮明で
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休日の今日は遅くまで寝てしまい、枕元にある時計は昼過ぎを告げる。
カーテンの隙間から指す光に眩しさに目を細める。

いつも通りのそのそと起き上がっていると、ふと異変に気づく。

視界の隅に昔見慣れたもっさり髪が見えた。

「・・・は?」

つい、声がでてしまった。

その声でこちらに背中を向けて座っている背中がピクリと小さく跳ねた。

今私は酷くマヌケな顔をしているだろう。自覚はある。
だから、頼むからこっちを見ないで。いや、でも、早く振り向いて。あ、やっぱり―――。

頭の中で繰り広げられる堂々巡りな思考回路。

固まった私などお構いなしに、そのもっさり髪の人が振り返る。

ああ、やっぱり、

「・・・・・ぅし・・・?」

寝起きと衝撃に言葉がうまく発音できない。

「恋人の名前、忘れたん?」

余裕を見せて笑うその人に、私は見開いた目を更に見開いた。

「久しぶりやな」

そう言って、その人は両腕を小さく広げた。

これは、抱き着いてこいということだろうか。
抱き着いてもいいんだろうか。
久しぶりどころか、もういないものだと思っていた想い人がそこにいる。
私はそろりそろりとゆっくり近づく。

目の前にきてピタリと動きを止める私。

ふっと頭を過ぎるこの間見た夢。

そうして、私の思考回路は答えを出す。

結局、今見ている彼も私が求めるばかりにつくりだした都合のいい妄想なんでしょう?

また傷つくのは嫌だ。
また泣くのは嫌だ。
また、目の前のコイツがいないんだと知るのは嫌だ!

夢が覚めれば同じことだが、傷は少ない方がいい。
コイツの温もりは知らない方がいい。

心が拒否反応を起こす。
私を守るために、彼との間に壁を作った。

その人は寂しそうに目を揺らした。
上げていた手を元の場所に下ろす。

無言で見つめあって数秒。

彼が口を開いた。

「好きや」

それを聞いた瞬間、私は耳を塞いだ。

「好きや」

それでも聞こえる声。

「愛の告白くらい、聞いてほしいわ」

目もギュッとつむった私に彼の表情はわからない。
声色には少し苦しそうだった。

ああ、
何が何だかわからないよ。

丸くまるめた体に力を込めて更に小さくする。

見たくない。聞きたくない。知りたくない。関わりたくない。

「――――――ッ」

こもっていて、何と言ったかは聞き取れなかったけど。
音が聞こえた。

それがあまりにも、苦しそうで。
さっきのとは比にならないほど苦しそうで。

それが彼の言葉だと分かった時、そろりそろりと、手を耳から話して、彼をうかがうように目を開けた。

瞬間―――、

私の体が感じる衝撃と温もり。

勢いよく、抱き着いてきたのは侑士のほうだった。




意図も容易く上がる心拍数
(怖いのは夢が覚めること)

担当:リク
   
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