set series | ナノ
03.諦める
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「嫌じゃ。」
「や、本当お願いって!」
「い〜や〜じゃ!お前さんしつこいぞ。」
いつも賑やかな3B教室。
また丸井でも騒いでいるのか、うるさいやつだ、と廊下にいた生徒達が教室を覗いた。
「仁王・・・もしかして部屋にあの・・・そういう系の本でも隠してるの?
大丈夫だよ!男の子にはみんなせーよくって言うものがあるって「頼む、止めてくれ。」はーい。」

そういう系、と聞こえたところで廊下から覗いていた群衆の半分が消えた。
なんだ、また仁王と名字の痴話喧嘩か、と言い残して。

仁王雅治と名字名前。
この二人は大喰らい丸井と同じくらい有名な二人である。
特に名字名前は見た目ぱっとしないし、性格も特別いいわけでもない。
そこら辺の女子と一緒にいても
「あぁ、名字ね。よく女子で固まってるよな。」
と言われるくらいのものだった。

2ヶ月ほど前までは。

今では名字名前と聞くと一つだけ立海大付属生周知の事実が枕詞として着いてくる。
「あぁ、仁王の彼女の名字ね。」
と。
いつの間にやら二人はくっついていて、気づけばいつも一緒にいた。
違うクラスだというのに休み時間となれば必ずどちらかが相手の教室にいる。
入れ違いになることもなく。
連絡をとりあうこともなく。

「よー、今日は名字がこっちに来てんのかよぃ。」
その時、B組で最も有名な人間の声がした。
先程も言った丸井ブン太である。
「あ、ブンちゃんだ。」
「本当じゃ、ブンちゃん、お前さんジャッカルんとこ行ったんじゃなかったか?」
「二人がブンちゃんって言うのにはもうツッコまねえから。無視するから。
で、二人して大声だしてなにしてんだよ。ジャッカルのクラスまで届いてたぞ。」
彼のクラスまで届いていた=3年教室全てに聞こえている、であるのだが
そんなことはどうでもいいのか名前は丸井に詰め寄った。
「ブンちゃん!!仁王が家にいれてくれないの!」
一方、詰め寄られた丸井は平然と答えた。
「あぁ、そんなことか。おい仁王。入れてやれよ。」
「いやじゃ・・・・。」
入れてくれない理由がわからない名前は仁王がそこまでこだわる理由が聞きたかった。
「に、仁王あのさ・・・。」
「なんじゃ?」
仁王の声の調子は普段と変わらないのだが、それがまた不安材料になる。
「あの・・・・。」
「どうした名前?」
「わ、わた・・・しの事嫌いになった?」
「は?」
「嫌い?」
不安な声の名前に仁王はどうも弱い。
「・・・いや、そんなこと、」
一言も言っとらんけど。と続けようとしたところに丸井の声が重なる。
「んなわけねえだろぃ!!こいつ名字にそーとー惚れてるぜこいつ」
やや呆れ顔の丸井はなお続ける。
「こいつ部活の時も授業中もサボった時でさえ名前が名前がってめっちゃうるせえんだよ!」
意外な事実の発覚に名前どころか本人であるはずの仁王さえびっくりしていた。
「ブンちゃんそれ本当に?」
「あぁ、まじだぜ。もう部員全員でいい加減にしてくれって言ってんだけどよー・・・。「ブンちゃんお前いい加減にしろ」あーい。」
返事だけはいいのだ。ふたりとも。
「仁王・・・・あのえっと・・・・。」
気づけば興味津々で聞いていた名前はいつの間にか真っ赤でうつむいている。
「・・・はぁ、わかったわかった。連れてっちゃるき」
「え、でも・・・・。」
仁王が愛してくれてるってわかったからいいんだ、やっぱり。と言おうとしたのを遮ったのは仁王の次の言葉だった。

「そのかわり、なにがあっても別れるとか言い出したらいかんぜよ。」

その言葉を聞いて、「うん、勿論だよ。」と笑った名前に。

そしてそれを聞いて口元がにやけている仁王に。

これからも言い争いになった時は仁王が譲歩するんだろうな、と思った丸井だった。

(やめてくれ。)(見てるこっちが赤くなりそうだ。)

続く。てか、一話めっちゃ長いですね、すみません。
   
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