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君を置き去りにして考えること
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愛しかった。

笑った顔が、泣いた顔が。
何も知らない、純粋な君が。


「………なんや、これ。」
いつの間にか、雫が頬を伝って、落ちた。

誰かのために泣いたなんて今まで経験したことすらなかった。

むしろ自分の為にも泣いたりはしなかった。

手を繋ぐのも、キスも、それ以上も嫌になるほど経験あるんに。
「ゆーしはなんか初めてのことないの?」
「んー……ないな。思いつかん。」
「え……」
「やってキスも、それ以上もしたことあるし。」
「な………。」
「あぁ、自分は初めてやったもんな。」
「どっせ──────い!!!」

そんな会話をなした昨日。
誕生日やったっけ、あいつの。


初めて、もろたよ。
初めて、やるわ。



人のために泣いたのも、誰かをこんな、胸が苦しくなるほどに愛したのも。


初めてやから。
大事なもの、やるから。
泣かんで。ほら、泣かんで。

「証拠が欲しいなら………」





なまあたたかい
(雫を君の、いとおしい君の手に落とす)

 
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