あのことわたし


たまたま見てしまった黒羽君への予告状

その字に心当たりがあったから

その気持ちを止めたかったから

あの子になろうと思ったの。





【6月15日、貴方の大切な人を頂きます】

達筆な字でそう書いてあった

黒羽快斗に宛てた予告状

(キッドに宛てた予告状ならありえるけど俺にかよ)

快斗は頭を悩ませていた

(大切な人ってことは、青子のことだよな)

心当たりのある人物は幼馴染である中森青子しかいない

俺は青子に6月15日は家にいて欲しいと告げた



そして、予告状の当日



青子が家にいるか確かめようと向かう途中、大通りの道路越しに

白いワンピースを着た青子が目に入った

(おいおいまじかよ…)

家にいて欲しいと言ったのに出歩いている青子に戸惑った

「おい!青子!」

呼びかけにも反応せず青子は足早に過ぎ去っていく

追いかけようとするが車通りの多い道の所為で見失ってしまった

「くそ…」

急いで青子に電話するが出ない

遠くから追いかけるとショッピングモールに入って行った


すると

突然店内の照明が全て消えた

館内の人々がざわめき、思うように進めない

「あのアホ子…」

快斗は完全に青子を見失ってしまった



青子はショッピングモールの屋上に上がった

停電でパニックになっているせいか屋上には青子しかいない

はずだった

「中森青子!あんたはここで死んでもらう」

高い声が鳴り響く

江古田高校の制服をきた女子が青子に拳銃を向けていた



「ーーー残念、わたしは青子ちゃんじゃないよ」

青子は振り向くと同時に変装の為に被っていたマスクを外す、そう青子は変装したみゆあだった

「皆藤さん…?!」

「ごめんね、わたし黒羽君の予告状見ちゃったの。それで貴女の字だってすぐわかった。貴女が黒羽君のこと好きだって知ってたから」

予告状の犯人はみゆあと快斗のクラスメイトだった
みゆあの言葉を聞いた犯人の顔が歪む

「中森青子さえ居なくなればいいのよ…!快斗を手に入れるためにはこれしかないの!皆藤さんも快斗が好きなんでしょ?!この気持ち分かるでしょ?!」

「青子ちゃんがいなくなっても黒羽君は貴女のものにはならないよ。好きなら、黒羽君を困らせたらダメだよ」

犯人の銃を握る手に力が入った

「綺麗事言ってんじゃねえよ!あんたはここで死ね!」

みゆあに向けた銃弾が放たれようとした瞬間



銃にトランプが突き刺さった



「おいたはいけませんね、レディ」


白いマントを翻して

みゆあを抱き寄せるキッド

「キッド?!」

みゆあはキッドが来たことに驚いて声を上げる

「怪盗キッド…?!」

犯人が油断した瞬間

待機していたみゆあのボディーガードが犯人を捉え、気絶させた

「なんでここにいるの?!」

「中森青子に変装したみゆあ嬢を追って来たまでですが」

キッドが冷ややかに答える

(キッド怒ってる…?!)

みゆあはキッドの態度に後ずさりした

「私が教えた変装をこんな風に使うなんて思いもしませんでしたよ」

キッドがみゆあに詰め寄る

いつものポーカーフェイスとは異なり怒りが見て取れる様子にみゆあは怯えた

「あ、の、ね!これはね」
『怪盗キッドーーー!!!!!』

みゆあが事情を説明しようとした時、けたたましいサイレンと警官の怒号が鳴り響いた

警察がキッドと犯人を捕まえに来たのだ

みゆあはこの状況を打開出来てホッと胸を撫で下ろしてキッドに逃げるよう声をかける

「キッド逃げて!犯人のことはわたしから警察の人に説明するから!」



「そのお願いは聞けませんね」

「え」

「私はみゆあ嬢に聞きたいことがたくさんあるので」

するとキッドは素早くみゆあを抱き抱え、ハンググライダーで大空に飛び立った

「きゃーーーーー!」

みゆあの叫び声が響き渡った


「逃がしませんよ、みゆあ嬢」

みゆあに微笑んだキッドの目は決して笑っていなかった



(あのことわたし)

 

[back]




[back]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -