ずるい怪盗


「黒羽快斗と中森青子は付き合っている」


それは周知の事実だった



2人は仲良しで、黒羽君はいつも青子ちゃんを構って、

青子ちゃんは黒羽君を怒っている。

そしてクラスメイトはそれを笑ってみてる。



―――わたし、以外は。



わたしはキッドが好きだった。

ある事件がきっかけでキッドは満月の夜にわたしのマンションに遊びに来るようになった。

キッドはマジックでわたしを驚かせたり、笑わせたりした。

時には気障なセリフでわたしをときめかせた。

わたしはキッドが大好きになった。


キッドは誰なんだろう?

そう考えるようになったある日、雨の日だった。


今日は満月じゃないからキッドは来ないだろうなあ

そう思っていたら窓から鈍い音がして、

ベランダにキッドが倒れていた。


「キッド!?大丈夫!?!?」


キッドは辛うじて意識があるものの朦朧としており、

このまま雨に降られてはいけないと思ったので部屋の中に連れて行った。


シルクハットが床に落ちる


―――どこかでみたことあるような?

わたしは彼のモノクルに手をかけ、彼の素顔を見た。


「・・・・・・・・・黒羽君」


キッドはクラスメイトの黒羽快斗君だった。

わたしは複雑だった。



「黒羽怪斗は中森青子と付き合っている」



わたしの恋が叶うことはない

泣きたくなんてないのに目から涙がこぼれ落ちてくる


「・・・みゆあ嬢・・・?」


意識朦朧とした黒羽君、いやキッドが私を呼ぶ

「キッド・・・・・・・・・」


「どうして、泣いているのです?」


「ごめんなさい、わたしキッドの正体が黒羽君だってわかっちゃった。
 
 でも、わたし、キッドが好きになっちゃってた」


「私が黒羽君だったらみゆあ嬢は泣くのですか?」


「だって黒羽君は青子ちゃんが好きだから」


そう言うとキッドは深いため息をついた


「・・・・・・・・・私は黒羽君ではありませんよ」


「嘘つかないで。もう隠さなくていいよ」

分かってるから、そう小さく呟くとキッドはじっとみゆあを見つめた


「確かに、黒羽快斗は中森青子のものです」



その言葉を聞いて、みゆあの目から涙がボロボロと零れ落ちた


―――分かってた、分かってたはずなのに

   本人の口から聞きたくなかった


「しかし」

キッドがみゆあの頬にそっと触れた


「怪盗キッドは、みゆあ嬢のものです」


「・・・なにそれ、ずるいよキッド」


ずるくて結構だ



そう呟いてキッドはみゆあに口づけた





(ずるい怪盗)

 

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