友達以上恋人未満

「はちーっ!!」


二年の俺たちの教室に悠歌のデカい声が響いた。
隣の席の雷蔵や三郎は何事かとお喋りを止めたが、すぐにそれが悠歌のせいだと分かるといつものことかという風にお互いに顔を見合わせ、すぐに話を再開した。

俺にとってもホントにいつものことなので、教室内を見渡し俺のところに向かってくる悠歌を見つめる。


「お、悠歌か。どうした?」

「英語の教科書貸して!今日一時間目なんだ!」

「お前、また忘れたのかよ。いい加減先生に目つけられるぞ」

「もうつけられてるよっ!でも忘れていくともっと怒られちゃうから、だから貸して!」


まったく、これで今年何度目なんだ。毎日といってもいいくらい悠歌は教科書を忘れてくるので、隣のクラスの俺が教科書を貸すのが日常になってきている。
まぁ、俺も嫌なわけじゃないし、こいつに頼られるのは悪い気はしないが。

しょうがねえなぁ。机の中をごそごそと漁り、英語の教科書を取り出すとそれを彼女に差し出す。


「ほら。俺たち二時間目だから、終わったら返しに来いよ」

「はーいっ。ありがとハチ、今度カラオケ行ったときなんか奢るから!」

「さんきゅ」


そう言うと悠歌は来たときと同じ勢いで自分のクラスに帰っていった。


「八左ヱ門も大変だな。悠歌に毎回教科書貸してさ」

「なんだかんだ言って八左ヱ門、悠歌ちゃんが毎日教科書借りにくるの待ってるもんね」

「うるせーなっ」


隣の席の二人に茶化され「本当は好きなんでしょ」とかなんとか質問責めにされたが、それをあしらう。
そりゃ、好きか嫌いかで言ったら好きだし、雷蔵や三郎じゃなくて、俺を頼ってくれることを嬉しくも感じる。

周りからは恋人に見える関係も、俺たちにとってはいわゆる『友達以上恋人未満』という関係。
それをもどかしく思ったこともあるが、いつも一緒にいられるし気軽にどっか出かけることもできる、すごく楽な関係なのに。
それを抜け出したいとは…思ったことはあるが実行には移せない。でも、もしそれが出来るのなら。

毎回俺を頼ってくれる彼女のこと、少しは期待してもいいんだろうか。



友達以上恋人未満
(今は、この距離がちょうどいい)

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