FIND

※6月10日のアニメ『気にする次屋三之助の段』ネタ





目の前にはなにやら怒った様子の悠歌。
出会ってわずか三秒という短さで、俺は地べたに正座させられた。


「…何か私に言うことがあるんじゃないの?」

「は??」

「『迷子になってごめんなさい』とか」

「何言ってんの悠歌?俺、そもそも迷子になんか…」

「なってるんだよ!!いい加減に自覚しろ無自覚な方向音痴をっ」


そう怒鳴って悠歌は俺の頭をど突いた。崖から落ちて怪我をして包帯が巻かれているところにピンポイントだったから、かなり痛い。
どうやら相当ご立腹の様子だ。


「痛ぁっ!?」

「言っとくけど、その痛み以上に作兵衛と私は頑張ったの。本当どれだけ苦労したか…」

「…悠歌??」

「おまけに怪我して帰ってきて、数馬にまで迷惑かけて!!」


正座している俺の頭に悠歌の手が伸びる。
高さ的には丁度いいその距離間、また痛みがくるっ…と身構えていてもそれらしいものは何もこない。
代わりに感じたのは、悠歌の温かくて労るような手の感触。

撫でられてる、と感じるのにそれほど時間はかからなかった。


「……心配したんだよ」

「悠歌」

「心配だからお説教してるのっ。ありがたく思って、そしてもう迷子にならないで!!」


だんだんと涙が混じってきた悠歌の声。
それからしばらくは堪えてたらしいが、一滴こぼれ落ちた途端に次から次へと溢れてきた。

その粒を落とす悠歌の顔をなんとなく見たくなくて、俺の頭を撫でていた手首を掴んで、そのまま自分の方へ思い切り引き寄せた。
悠歌の目元が当てられた肩がじんわりと湿っていく。


「さ、三之助っ」

「ごめん、心配かけて本当に悪かった」

「………」

「俺頭悪いから、また自分でも気づかないうちに迷子になってるかもしれない。その度に悠歌に迷惑かけるかもしれない。だけど…」


その時悠歌が顔を上げた。まだ目元には涙が残っていて、少し頬も紅潮していていつもより可愛いなあ…なんて、今思うことじゃないけど。


「悠歌、俺を、見つけてくれ」

「…当たり前でしょ。そっちがイヤって言っても見つけてあげるんだから」


無理矢理笑顔をつくって俺に見せつけた。
やっぱり悠歌は、誰よりも一生懸命で誰よりも可愛い。そういうとこ、好きだ。


「何ニヤケてんの?ちゃんと反省してよねっ」

「はーい」


…まあ、その想いを伝えるのは、もう少し先のことになりそうだ。



『FIND』
(絶対に、絶対だからっ)

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